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小春日和

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昨日のこと。
ボクが、内心焦っていたときにキミは、ちょこんとやってきてこの場所に座っていた。
コスモスの花を揺らして言いづらそうにしてたね。

「どうした?」
「…にゃん」
何もわからない。予想も 思い当たらない。
「何?」
「もっと赤いコスモスがあるの。真紅の…」
「見たことあるかなぁ。今度」
「もう今年は見られないかな。時期が終わっちゃったもん」
「それは気になるな。どれどれ?」
ボクは、仕事の資料保存として使っているノートパソコンを開け、検索を始めた。
「どんな色の?こっち来て」
キミを膝に乗せるように ふたりで画面を見て探した。
「にゃん!」
「これ?『チョコレートコスモス』チョコレートのような甘い香りがします。で…」
開花の時期は、九月下旬からか、とぼそりとボクは呟くと、ボクの前のキミがうな垂れた気がした。そのうなじに囁いた。
「来年の楽しみができたね。見に行こう」
「にゃ」
「約束」
キミが振り返り微笑んでくれたが、同時にボクは画面の文字にドキッとした。

花言葉は『恋の終わり』『恋の思い出』

駄目じゃないか。こんな花の匂いを嗅いだら… ボクはチョコレートに負けるのか?
それでなくても キミはチョコレートが好きなんだから……。
最後に見つけたこの花言葉だけを信じよう。

『移り変わらぬ気持ち』

ボク自身が 少々乙女チックになりつつあるのかとドキッとした。

いつも無理を言わず、ただボクといるだけで幸せだって顔をして、気まぐれに愉しませてくれることが、ボクにはちょうどいい息抜きの時間になって いい仕事ができているし、成果を出せている。未だ契約の打ち切りもなく この仕事と繋がっていられるのは何より嬉しい。(ちょっと褒めすぎたかな。これもナイショだ)

夕方からの日暮れは早く、すぐに暗くなってしまう。
キミとわずかな時間しかいられなかったけれど、いつものようなじゃれたひとときがボクをほっと癒してくれた。送っていくと言ってみたけれど、頑張ってと優しいキスを置いてふかふかのコートを着て にゃんと帰ってしまった。
こうして、ボクはキミの優しさに寒い頭の中に暖かさと冴えた思考が戻ってきたのだ。

作品名:小春日和 作家名:甜茶