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関西夫夫 台風

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 これで全員、帰宅。事務室のほうは電源も落として俺の部屋だけクーラーをつけたままにした。日報やら精算も閉店した支店から、徐々に集まっているが、慌てることもない。明日の朝までにチェックしたらええので、とりあえず一眠りすることにした。昼飯を食ったので、あまり空腹ではないし、これといってやらなあかんこともない、となると寝るに限る。ニュースはつけっぱにしてソファに転がった。読みかけの文庫を手にして、窓の外を眺めたら、すっかり真っ暗になっていた。

・・・あれま、まだ八時にもなってないのに・・・・

 いつもやったら、まだ働いてる時間やのに、人がおらんわ、オフコンは沈黙させてるわで、静かなものや。防音は効いてるから、風雨の音も聞こえへん。本を読んでたら、いつのまにか寝てた。

 電話の音で目を覚ましたら真っ暗やった。停電してるらしい。窓枠がキシキシ揺れてる音がする。音でテーブルに置いてた携帯を手にした。
『おはよーさん、俺の嫁。』 という声に、ほっと息を吐いた。俺の旦那からやった。
「・・・今・・・何時?・・・」
『えーっと、一時過ぎや。とーとー停電しよった。・・・・寝てたんやったら、すまんかった。大丈夫か? 』
「・・うん・・・寝てるぐらいやから、なんもあらへん。おまえのほーこそ、大丈夫なんか? 」
『ああ、俺は後方支援やし。災害がない限りは待機してるだけや。割と暇やで? 停電したから、ちょっと気になってな。』
「おおきに。会社に残ったんやけど、ひとりで快適や。意外と暑ないもんやな。」
『いや、停電したんは、ついさっきや。これからやぞ。一人やったら、全部脱いでポンポンスーで床に転がっとけ。それがベスト。』
「だあほ。どこの変態じゃっっ。そこまでせんでも、アイスノンも水もある。おまえこそ、脱ぐなよ。」
『あははは・・・あかんやろーな。女性陣もおるしなあ。・・・もうちょっとしたら台風の目に入るらしい。うまいこと通ったら、星空が拝めるらしいで? 』
「別にええわ。・・・あ、そしたら電気つくんか? 」
『たぶん、すぐに復旧すると思うで。・・・・おまえ、明日は? 』
「とりあえず午後まで仕事して帰れる予定や。おまえは? 」
『定時上がり。』
「ほな、メシ作っとくわ。リクエストは? 」
『北京ダック。』
「どあほーっっ、作れるもんを言え。鴨なんか売ってへんやろーがっっ。」
『せやなあ。白飯と白菜の漬物と塩ジャケで大根の味噌汁。』
「それ朝飯セットちゃうか? 」
『何を言うてんねん。俺の最後の晩餐にケチつけんなや。』
「やっすい最後の晩餐やのぉー花月。」
『おまえの最後の晩餐は? 』
「缶コーヒーやな。あれが栄養あって甘くて美味い。」
『どあほっっ。おまえこそ、やっすいやないけ。』
「それを、おまえが持って来て、一緒に飲むまでがオプションでついてないとあかん。」
『まあ、それは叶えたるわ。どうせ末期の水も俺が飲ますつもりやからな。覚えとったら末期の水も缶コーヒーにしたるから。』 
 と、バカな話をしてたら電灯が点いた。旦那のほうもついたらしい。おお、と、声が聞こえた。それから、『よしもとー。』 と、呼ばれている。
『しもた。みつかってもーた。ほな、夕方に帰るから。』
「わかった。気ぃつけてな。」
『はいはい、おまえもな。・・・愛してるで。』
「三途の川へ行け。」
 俺の声に笑って電話は切れた。ちょっと部屋の温度は上がって、じとっとした空気になってきた。これはあかん、と、クーラーをつけてテレビもつけた。台風は、そろそろ上空にやってくるらしい。とりあえず目は覚めたから、仕事をしておくことにした。今夜の売り上げは少ないので、チェックもすぐに終わるから、今晩のおかずを考えようと思う。最後の晩餐なんぞ、くそくらえや。どうせなら、馬力のつくうなぎでもいわしたろうと思う。
 

作品名:関西夫夫 台風 作家名:篠義