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からっ風と、繭の郷の子守唄 第26話~30話

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 「わかった。じゃ広瀬川のプロムナードを歩いて帰ろう。
 2万個のイルミネーションが、川面を覆っている。
 光輝いている天の川は、壮観だぜ。
 七夕も近いし、俺たちみたいな織姫と彦星にはうってつけの散歩道だ」


 「康平と、今頃になってから、初めてのデートか。
 それも悪くないわね。
 先に出るから、戸締りができたら後から追ってきてちょうだい。
 天の川か・・・・なんだか久しぶりに、ワクワクしてきたわ」
 
 清流を守る会と前橋市は、クリスマスと新年を挟んだ時期に、
10万個あまりのイルミネーションを、広瀬川に設置する。
クリスマスに、小さく点灯されたのがイルミネーションのはじまりだ。
いまでは新年を迎えるとき。桜が満開になる時期。市内が七夕飾りで賑やかに
なるときに、飾られるようになった。

 「わぁぁ・・・・凄い」

 呑龍マーケットから100mほど東へ歩くと、広瀬川のほとりに出る。
川面を覆い尽くして輝く青色発光ダイオードは、地上の天の川そのものだ。
豊かに流れていく水の表へ、青色ダイオードが光を落とす。
風に揺れながら点滅を繰り返す川面の天の川は、通りかかる人の目を誘い込む。
青い光に魅了された美和子が光源に引き込まれるように、遊歩道の手すり越しに、
無防備に自分の上半身を乗り出す。

 「落ちるぞ。おい」

 追いついてきた康平が、背後から美和子を抱きとめる。
腰へ回された康平の指の上へ、それに応える形で美和子が自分の指を重ねる。

 「落ないわよ。歩き慣れた広瀬川のプロムナードだもの。
 でも、一緒に歩いてくれたのは別の人です。
 あんたったら、一度もデートに誘ってくれなかったでしょ」

 「そうだよな。俺たちは、一度もデートしていないよな。
 3年間、毎日のように電車の中で顔を合わせていたというのに・・・」