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からっ風と、繭の郷の子守唄 第26話~30話

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 「ママが神妙な顔で相席を頼むから、いったい誰が来たかと思えば、
 トシのところで修行していた、あの時の機械科卒の坊主か。
 懐かしいなぁ。あれからもう10年は経つか。
 んん、なんだ。綺麗なご婦人と一緒かよ。
 よかったぜ、断らなくて。小僧のことはどうでもいいが、
 こちらのご婦人なら、俺たちのほうからお伺いをたてて、
 相席をお願いをしたいくらいだ。
 トシ。ぼんやりしないで席を空けてやれ。小僧のためにとなりを空けろ。
 娘さんは、そのあたりの一番いいところへ座れ。
 今夜の主役は誰がどう見たって、間違いなく、別嬪のお嬢さんだ。
 ・・・・ちょっと待て。どこかで見た覚えがあるような、お前さん。
 どこだったかなぁ・・・・思い出せねぇなぁ。
 見た覚えはあるんだが、俺のただの勘違いのような気もしてきた。
 こんな別嬪さんだ。忘れるはずはないんだが、おかしいなぁ、
 俺もついに、ボケがはじまったかな・・・」

 「美和子といいます。
 演歌歌手をしていますので、繁華街のどこかでお逢いしたかもしれません。
 無理な相席などをお願いしまして、申し訳ありません。
 お近づきにしるしに、どうぞ、一杯」

 美和子がテーブルに置かれていた徳利を手にする。
美和子が柔らかい目が、極道の岡本の顔を正面から見つめる。
(おいっ、あの子、演歌歌手だってさ。あとで、一曲でいいから歌ってくれねえかなぁ)
ひそひそとかわす外野の声を、岡本が小耳にはさむ。
苦虫を噛み潰したような鋭い視線を、ひそひそと声を交わしている席へ向ける。
『何か用か』とばかりばかりに、ジロリと睨む。
「おいおい。ケンカ腰になるな、酒が不味くなる」俊彦が軽く、そんな岡本をたしなめる。

 「何はともあれ、久しぶりの再会だ。
 こんなところでばったりろ行き合うのも、なんかの縁だ。
 まずは、乾杯といこう。
 美人のお嬢さん、すまないね。俺にも一杯ついでくれ。
 康平との再会を祝して、まずはみんなで、乾杯しょうじゃないか。
 おい、岡本、怖い顔をしていないで機嫌を直せ。外野の事は気にするな。
 こっちを向け。乾杯だ、乾杯!」

(31)へつづく