友達は賽銭箱からやってくる
けれど、調べ不足ですでに終わっていた。
ブルーシートがかけられた屋台が寂しさを増やしていく。
「……手ぶらで帰るのものなぁ」
なんとなくお賽銭に近づいて、10円を投げ込んだ。
なにを祈るでもなく手を合わせた。
ぽん。
目をつむったとき、頭に小さな紙が落ちてきたのがわかった。
目を開けると、おみくじが落ちている。
しかも、"友達おみくじ"なんて書いてある。
「ようし、いい運勢でありますように」
末吉。
「やっぱりね! ちくしょー!!」
思いっきりおみくじをたたきつけた。
おみくじ引くとだいたいこんなのばっかりだ!
吉の末期で、末吉ってか! ふざけんな!
この後に、突然友達ができた。
同じ祭りに、同じように調べ不足で、
さらに出会いを求めてやってきた男がひとり。
近い境遇だったのもあってすぐに打ち解けた。
……そこまではよかったんだけど。
「なあ、明日遊びにいかね?」
「お前の家泊まりに行っていいよな」
「ラーメン食いに行こうぜ」
近い!!
めちゃくちゃ友達との距離感が近い!
俺は週に1回遊べればいいくらいなのに、
こいつは毎日毎晩年中無休で遊びたいタイプらしい。
「もう俺を放っておいてくれぇぇ!」
数日後、俺はふたたびあの神社にきていた。
あれからいろいろ考えたところ、
おそらく友達は、友達おみくじでできた人間だろう。
おみくじを詳しく見てみると、
距離感:近しい
とか書いてあった。
「となれば、もっといいおみくじを引けば
もっといい友達ができるはずだ」
10円を賽銭箱に投入に、事務的に手を合わせる。
すると、頭の上にぽんと紙が落ちてきた。
予想通り、友達おみくじが1枚。
「どうか、いい運勢が出ますよーーに!!」
小吉。
「やっぱりかぁぁぁ!!!」
俺の運勢が悪すぎるのもあって小吉って。
末吉とどっちがいいのかもわからないよ!
「ええい! いい運勢出るまで引いてやる!」
末吉
小吉
小吉
末吉
吉
「ぐあああああ!!」
ぜんっぜん出ないじゃん!!!
この後友達ができるとしても吉程度の友達じゃ
親友とか生涯の友人になれる望みは薄い。
「いや、待てよ……まさか金額か?」
思えば、これまで10円でおみくじを引いていた。
良質な友達を引くためには相応の金額が必要となるわけか。
財布から神も驚くであろう1万円札を抜いて、賽銭箱に。
「お願いします! 大吉の友達をください!」
凶。
「ふざけんなああああ!!!」
怒りのあまり賽銭箱を倒すと、中からおみくじがこぼれだした。
どれを確認しても大吉は書かれていなかった。
詐欺じゃないか!
とにかく今日引いた吉以外のおみくじを破って、
しぶしぶ家に帰ることに。
「もう俺の友達を大事にしよう……」
翌日、偶然に友達ができた。
はた目に見ればどう考えても偶然だが、
友達おみくじを引いた俺にはおみくじの効果だとわかる。
吉友達なので、まあ悪い人ではないものの。
「飲み会? ああ、パス」
「今日は気分がのらないから」
「また今度な」
付き合いが悪い!!
「気にするな。また誘うよ」
とはいえ、どうせ何を引いても大吉は出ないんだし
今いる友達を大切にするしかない。
数日後、ふいに吉友達から連絡がきた。
あっちから食事に誘うなんて珍しいことだった。
「実は友達を紹介したくって」
「友達?」
「お前と趣味がぴったり合うと思うんだ」
紹介された人は見たこともないような美人で、
最高に性格がよくて話が合う友人だった。
「うおおお! 神様ありがとおお!!」
そのとき、持っていた吉の友達おみくじに
1文字が追記された。
大吉。
作品名:友達は賽銭箱からやってくる 作家名:かなりえずき