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からっ風と、繭の郷の子守唄 第21話~25話

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からっ風と、繭の郷の子守唄(21)
「呑竜マーケットの今と、そこへ屯する地元のミュージシャンたち」

 弁天通り商店街のアーケードを中程まで歩いていくと、
ぽっかりと突然、異次元への入り口が現れる。
入り口には『呑竜飲食店街』の、古いアーチ型の看板がかかっている。
西から東へ抜けていく路地に、小さな飲食店が驚くほど密集している。
康平の居酒屋も、この路地の真ん中にある。

 3人が並らんで歩けば、誰かしらがつまずいてしまいそうな細い路地だ。
狭い路地に、せいぜい10畳程のスペースの飲食店が、およそ20ほど、
びっしりと連なっている。
店舗の間に隙間は無い。薄い壁1枚に仕切られた細長い長屋の様なものだ。
不況が続くいま、ところどころに空き店舗が見える。

 昭和57年1月の大火で、呑竜マーケットのほぼすべてが焼け落ちている。
大蓮寺の境内の一部を利用して、バラック建ての店が営業をはじめたのが
呑竜マーケットの原点だ。
戦後の荒廃期。前橋市民の胃袋を支えてきた闇市は、役割を果たしたあと、
今度は、気軽に憩える飲み屋横丁としてあらたな道を歩みはじめた。
安く飲めるという事で、おおくの飲んべェたちがこの地へ集まって来た。
うなぎの寝床のような横丁に、さらに雑多な増築が始まった。
全盛期には30を超える飲食店が、ごみごみと軒を連ねたという。