故郷に帰りたい
曇り空の下、T氏は深い緑色の草原の上に立っていた。草の上には、立派な体格の青年や髪を束ねた女性、おしとやかに座る少女、さらにはスフィンクスのように座るライオンの大理石像などが、まるでルネサンス期の絵画から出てきたかのように並んでいた。
また、それらの群像から10メートルほど離れたところに、同じく大理石のような物質でできた丸いテーブルと二つの白い椅子が置いてあった。
(ここは、いったいどこなんだろう…)
そう思いながらゆっくりと歩いていると、場違いと言ってもいいぐらいの展示物がT氏の目に留まった。
それは、彫刻が施され、鈍く輝く金でできた、人間1人は入れそうな縦長の箱状の物体であった。もちろん、彼がそれに注目しないわけがなかった。彼が目を凝らしてそれを見ていると、その縦長の物体から、がたっ、と重めの音が響いた。これには、T氏も僅かに呼吸が止まった。こういうところから出現するものは、おおよそ見当がつく。
彼の職業は神主なので、魔よけと思われる祈りの言葉を唱え始めた。しかし彼は腕が未熟なのか、縦長の物体はそのまま開かれ、中から予想どおり全身真っ白な人物が現れた。T氏はもはや絶叫さえできず、ただ浅く早い呼吸を繰り返すのみであった。
また、それらの群像から10メートルほど離れたところに、同じく大理石のような物質でできた丸いテーブルと二つの白い椅子が置いてあった。
(ここは、いったいどこなんだろう…)
そう思いながらゆっくりと歩いていると、場違いと言ってもいいぐらいの展示物がT氏の目に留まった。
それは、彫刻が施され、鈍く輝く金でできた、人間1人は入れそうな縦長の箱状の物体であった。もちろん、彼がそれに注目しないわけがなかった。彼が目を凝らしてそれを見ていると、その縦長の物体から、がたっ、と重めの音が響いた。これには、T氏も僅かに呼吸が止まった。こういうところから出現するものは、おおよそ見当がつく。
彼の職業は神主なので、魔よけと思われる祈りの言葉を唱え始めた。しかし彼は腕が未熟なのか、縦長の物体はそのまま開かれ、中から予想どおり全身真っ白な人物が現れた。T氏はもはや絶叫さえできず、ただ浅く早い呼吸を繰り返すのみであった。