意味を持たない言葉たちを繋ぎ止めるための掌編
承認
「自分を認められないから、人に認められたいんだね。君は」
「誰だってそうでしょ? 人から認められれば嬉しいでしょ?」
「まあ、そうかもしれない。ただ、たとえ人が認めてくれても君は君を認めないんだ」
「だって、自分に自信がないんだもの」
「底なしだよ。その気持ちは永遠に満たされることもない。常に飢え続ける。呪いみたいなもんだ」
「じゃあ、どうすればいいっていうのよ?」
「さあね。自分で考えなよ。君はそもそも自分で考えることを放棄しているんだ。それに気づいていないけど」
「私は、考えてるわよ」
「考えている、つもりになっているだけさ。いや、考えさせられてるだけだよ。どこかの誰かに」
「教えてよ。どうすればいいの?」
「はあ。君は自分のことさえも大切にできないんだね。僕に出来ることは、君に珈琲を淹れてあげることと、散歩でも行ったら、と勧めてあげることくらいだな」
作品名:意味を持たない言葉たちを繋ぎ止めるための掌編 作家名:篠谷未義