意味を持たない言葉たちを繋ぎ止めるための掌編
縛る心
頭のなかに薄い膜が張られているかのように、思い出すことができない。
思い出そうとすればするほど、その膜は厚さを増していく。
もがけばもがくほど、絡まる蜘蛛の巣のように。
近づけば近づくほど、痛みを増す針鼠の針のように。
それは、触れてはならないものになっていく。
何をすればいいのか、もはや私には分からない。
助けを求めたくても、助けを求めるための声を私は持たない。
あの遠くに見える微かな光に、君の影を見た。
あふれ出た涙はその微かな光さえもかき消した。
今はそれでいい。今はこれでいい。そう私は私に言い聞かせた。
作品名:意味を持たない言葉たちを繋ぎ止めるための掌編 作家名:篠谷未義