真理子の勇気
真理子は弁当のふたを取った。
米の臭いがしてきた。
口に入れると炊きたてのようであった。電子レンジで温めた感じではない。
本当におじさんの言った通りに美味い。
真理子は食べ終わると用務員室に顔を出した。
「ありがとう。美味しかったわ」
「だろう。今は弁当作ってくれる家庭が少なくなってさ、事務長はこんな少ない弁当温めるのは、非効率だって言うんだよ。炭は高価だって、でも家庭の味、おふくろの味、俺は大切だと思ってる」
「そうね。お金ではないわね」
「先生今度事務長が廃棄だって言ったら助けてくれると嬉しいよ」
「考えておくわ。とにかく美味しかった。明日も頼みに来ます」
翌日真理子が弁当を持っていくと、生徒たちも持って来ていた。
「おじさんありがとう。お願いします」
生徒の顔もおじさんの顔も笑顔である。
教室の顔とは違って見えた。