真理子の勇気
安い時計はそれだけ大切にはされない。
電池を交換すれば十分に使えるのだ。
シャープペンも芯を入れさえすればいいのだ。
真理子は倉庫から一冊の国語辞典を手にした。
「おじさん頂いていい」
「どうぞ、喜ぶよその本」
真理子の事典よりもはるかに新しい。
こうもり傘でさえ真理子は高校の三年間一本で我慢した。
100円の傘が出回り、本当に物を大切にしなくなったように思えた。
倉庫には運動靴や、レインコートなどもあった。
「これらはどうするんですか」
「全部焼却ですね。もったいないから拾いだしているんですが、今の生徒は他人のものは汚いって貰ってくれませんからね」
真理子は職員室に戻り、鉛筆を削り器に差した。
「もったいない」
と机の上にあった白紙に書いた。
綺麗な文字が書けた。