真理子の勇気
春休み
真理子の勤務する女子高校は、県内でも三本の指に入る進学校である。
お茶の水、早稲田、慶応、医学部にも5名くらいは合格する。
流石に東大は時々である。
卒業式も終わり、真理子は机の整理をして、ごみをおじさんの所に持って行った。
おじさんとは暖飯器でお世話になってから仲良しになっていた。
「おじさん何してるんですか」
「これは時計、電池切れらしい。これはシャープペン、芯が無いだけだよ」
「ホント、使えるわね」
「先生これ使う」
おじさんが見せたのは、まだ長い鉛筆である。
「もったいないわね。2,3本頂くわ」
「これはみんな卒業生が捨てたものだよ」
おじさんが倉庫の中を差した。
参考書、事典どれも使える。
ビニール傘は100本くらいある。
「自転車も今年は2台あるよ」
電車の生徒が置いて行ってしまうのだ。ほとんどの生徒は駅から歩いて登校するが、何人かは自転車で来る。
自宅に持ち帰ることと指導しているが、置いて行く生徒も毎年いる。