目的地まで
やがて、2人は分かれ道に差し掛かった。ナツハは直進し、ヤスキも彼女の後に付いていこうとした、そのときである。妙なことに、彼がまっすぐな道を通ろうとすると、まるで目の前を透明すぎる壁で遮られているかのように、先を進むことができなかった。
もう一度同じことを試したが、結果は同じだった。その奇妙な事態に、彼女は彼のほうを見た。
「どうしたの?」
ナツハが心配そうに言うと、ヤスキは不満を全面に出して言った。
「何で俺はこの道を通れないんだよ」
彼女は少しの間考え込むと、顔を上げて言った。
「きっと、あなたはもう一つの道を通らなければいけないのよ」
彼女の言葉を聞き、彼の顔に恐れの色が浮かんだ。
「えっ、も、もしかして、俺の目的地は、君のそれとは違うってわけ?」
ナツハは、軽く下を向いて目を閉じて首を横に振ると、目を開き、落ち着いて言った。
「いいえ。あなたが恐れている場所は、もう50年も前に閉鎖されたの」
ヤスキは、目を大きく開いてナツハの顔をじっと見た。彼女は軽く、しかし確信に満ちてうなずいた。
「じゃあ、俺はいったいどこに行くんだい」
「……あなたも私も、『目的地』は同じよ。あなたには遠回りが必要なだけ」
彼は不満げな顔をしたが、次第に彼女の言葉の意味がわかってきた。
「……俺たち、また会えるかな」
「もちろんよ。『目的地』でまた会いましょう」
ナツハはそう言うと、ゆっくりとほほ笑んで手を振り、歩き出した。ヤスキもさびしそうな笑顔でナツハに手を振り、もう一つの道を歩き出した。