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月とコンビニ
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novelistID. 53800
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ツナガル

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男    ああ、いや、…作者のことは知らんのです。
女    そうなんですね、すみません。
男    あ、いえ。
女    …。
男    …、でも、これは、面白いと、思う。
女    …。
男    …。
女    でしょ?
男    はい。
女    私もはまってるんです、「ヴィクセン」。
男    あ、この巻ですか?
女    あ、いえいえ。ちなみに、誰ですか?
男    え、誰って?
女    どの子が好きですか?
男    ああ、僕は、みさきちゃんが。
女    あら。
男    ん?
女    私といっしょ。
男    そうなんですね。
女    けなげですよね、彼女。
男    ええ、人から求められることに疲れているのに、人を求めずにはいられないんだ。
女    そう、自分の求めているものと、他人が求めているものが違うの。
男・女  …、わかります。
女・男  わかりますか。
男・女  わかります。
店員   ありがとうございましたー。
      ☆男、漫画を置き、電話機のもとに行く。ひとつ手に取り、電話線を入れる。
女    ぷるるるるるる、ぷるるるるるる、ぷるるるるるる、ぷるるるるるる。
      ☆男、女の方を見る。
男    はい、もしもし。
女    はい、もしもし。
男    え?
女    へんなの、自分から電話したくせに。
男    …、そうか。
女    そうですよ。
男    それじゃあ、あの漫画喫茶で会いましょう。
女    「ヴィクセン」の棚の前で?
男    来週は、最新刊が出るそうですよ。
女    そうだ、衝撃的だと言っていた。
男    楽しみですね。
女    ええ、とっても。
男    がちゃり。
店員   いらっしゃいませー。
      ☆店員、店内を見回し、漫画を縦にしたり横にしたりとならべかえる。
女    いつもそう。
      ☆M「カノン」C・I
女    おんなじところをくるくるしているの。手を伸ばせばいいのにって言うの。でも無理っても言うの。付き合いたいわけじゃないの。えっちをしたいわけでもないの。貴方を通じて、私を感じていたいだけなの。
店員   いらっしゃいませー。
女    でも、触れ合う人が変われば自分も変わると言うのなら、貴方を通じた私は、貴方の味が、するのかしら。貴方の色をしているのかしら。貴方の香りを…。私は、貴方を感じているのかしら。
男    …、わかります。
女    わかりますか。
男    電話線を入れました。
女    だから、電話がかかってきたんですね。
男    電話は、多くなくていいんです。でも、ないと不便だ。かかってこないけれど、かけられない。
      ☆男、女に近づき、被っている可愛らしい紙袋をはずす。
男    はじめまして。
      ☆女、男をまじまじと見る。
女    はじめまして。
      ☆男、女、漫画を見る。
男    あ。
女    一冊ですねぇ。
男    どうします。
女    しょうがないなぁ。
男    …。
女    …。
男・女  じゃんけんぽん!
      ☆M「カノン」Fで上げる。暗転。

おわり
作品名:ツナガル 作家名:月とコンビニ