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からっ風と、繭の郷の子守唄 第16話~20話

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からっ風と、繭の郷の子守唄(16)
「あれから10年。いまの貞園と康平は」

 「今から考えてみても・・・・
 きっとあそこがわたしたちの運命の分かれ道だったのよ。
 良い雰囲気が漂っていたんだもの、私たち。
 あの時、ヤドリギの下で、思い切ってキスしておけば新しい
 可能性が開けたのよ。
 あなたが躊躇ってしまうから、10年後、こんな風になってしまったのよ。
 ねぇ。聞いてる?、康平くんったら」


 カラリと、いつものようにグラスをかき回しながら貞園が、
カウンター越しに酔った目を康平に向ける。


 「私だって、少しは、期待していたのよ。
 あの直後、あなたは誰の絵がすきなのなんて、下らない質問するから、
 その気がどこかへ吹き飛んでしまったのよ。
 いわさきちひろの絵は大好きよ。
 水彩独特のにじみや、淡い輪郭の書き方が大好きです。
 彼女が描く子供たちには、生き生きとした生命力が溢れています。
 東京のちひろ美術館に、毎日通いました。
 安曇野に完成したばかりのいわさきちひろ美術館にも、通いました。
 肩書きは絵本作家でも、彼女の水彩画は間違いなく一級の美術作品だと思う。
 世界に通じる芸術家のひとりです」