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ワタリドリ
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太陽と宇宙の瞳 第1話 「この星に生まれて!」

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嫁いで隣の区に越してきて、お互い結婚してからはそれほど会う事が少なくなったようだけど、僕が生まれた時に、仕事で忙しかった父や身内よりも誰よりも早く駆けつけて母の手をにぎってくれたのもゆりかさんだそうです。
ゆりかさんの話しだと、僕はお母さんから生まれた時気絶したように安らかに眠っていて、大声で泣かなかったらしい。
お母さんも今生命を出し尽くしたように意識がぶっ飛んで同じように眠ってしまっていて、さすが猿顔の似たもの親子はいきもぴったりだねなどとよくからかわれたりもした。
ゆりかさんより10年も結婚が遅かったお母さんは、もともと低血圧や貧血などいろんな持病もあってお医者さんから子供を産むのは難しいと何度も言われていたらしいけど、お母さんはあきっぽい性格だけど一度決めた事は最後までやり遂げる人だからって最後の最後までみんなを押し切って僕を産んでくれたそうです。
「頑固であぶなっかしい所はあんたのお母さんの悪い所で良い所でもあるの。惚れ直したわ。」と冗談ぽく語ってくれたゆりかさんだったけど、その表情からは、友情よりも愛情とゆう言葉の方が似合うくらい本当にお母さんの事を大切におもってくれているように感じた。
そんなゆりかさんも、20で早く結婚したものの子供がいなくて、産むことができない事情があるのかと何気に聞いたときがあって、そうゆう事じゃなくて旦那さんも自分も子育てには向いてなくて結婚してもはじめからつくるつもりはなかったみたいなのです。
おしゃれで茶髪にピアスをして上品な女性のオーラが漂っているのに性格は男勝りで雰囲気に全然似合わないしゃべり方をするゆりかさんに僕も息子のように可愛がられてきたせいか一人っ子の僕にはどこか姉のようで今では家族と同じくらい大切で安心できる人でもあります。

ゆりかさんと違ってお父さんはおとなしい人でした。お母さんが独身の頃よく行くお菓子屋さんで働いていたお父さんに何度か店に行く度に親しくなって結ばれたそうです。
仕事もマイペースで常に残業らしく家にいることがほとんどありません。お菓子開発の試食ばかりしてるみたいで、体格もぽっちゃりとしていました。そんなに遊んでもらった記憶はないけど、いつもそばにいるだけで自然と癒される不思議なオーラを放ってくれていました。
少し不器用で恥ずかしがりやで太陽のように笑う眼鏡の似合うお父さん。お酒が大好きで、アルコールが入るとほっぺたが真っ赤にほてるように笑顔がほころび、僕もその笑顔をみるのが大好きでした。ゆりかさんが家に来た休みの時とかは母と3人で夜が明けるまで台所で飲んでいて、みんなの心地よい笑い声に耳を傾けて隣の部屋で僕は安心して眠りについた記憶の思い出が沢山あります。

去年の暮れの12月31日。すでに酔いつぶれていた父は会社の人たちと忘年会の二次会に向かう途中にうっかりと河原の階段で足をすべらせ転落死したのです。即死だったそうです。
ひつぎに入れられて最後にみたお父さんの顔は、本当に酔ったままのほっぺたがピンク色に染まったやすらかな寝顔のようにみえました。
突然の事で涙が止まらなかった僕もお母さんも、そんなお父さんの仏のような顔に式が終わるまでいくらか気持ちが救われていました。
新年早々お葬式なんて気持ちの切り替えのつかないまま正月を迎えたせいか、お母さんはたましいの抜けた人形のようにしばらく意識の漂流状態が続いた毎日でしたが・・・。
旦那さんとクリスマスから長期ハワイ旅行に行っていたゆりかさんが飛行機のような速さで駆けつけてくれてから、じょじょにゆっくりだけど落ち着きを取り戻してゆきました。
でも、お父さんが亡くなった事実にまだ実感が全然持ててなくて、それはお母さんもゆりかさんも同じなようで、それでもゆっくりと時間の流れに身をまかせるように日々は過ぎてゆきました・・・。

だけど自分はお父さんが亡くなっても、あんなに悲しくて沢山泣いたのになぜか喪失感とゆう心の感情だけはほとんど少しもわいてこなかった事に、この時の僕にはまだ理解する事が出来ませんでした。