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毒の華

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ガタイの良い男はお辞儀し去って行った。石川はずっと俺を見つめたまま固まっている。
「い、石川? 」
「すみません。先輩本は取れましたか? 」
「いや、まだだけど」
すると石川はすっと立ち上がり、背伸びもせずにいとも簡単に本を取った。
「これでいいすか? 」
「ああ」
俺はその本を受け取った。
「ありがとう」
「それはズルいっすよ。ほら早く買っちゃいましょ」
ズルい? 何がだよ。俺は石川の言葉に疑問を抱きながらも取りあえず本をレジに出した。

「先輩、俺決めました」
本屋を後にし駅前を歩いていたとき、突然石川は言った。
「何が? 」
石川は一歩二歩と俺の前を歩き、数本歩いたところで振り返り俺の前に立った。石川の二重の切れ長の瞳は俺を真っ直ぐ見つめている。
「俺は邑楽先輩のことが好きです」
季節は秋。そろそろ冬に近づいてきているせいか北風が吹く。
「例え、邑楽先輩が男だろうが俺は好きです」
「お、俺は男ーー 」
「だから人の話聞いてました? 俺は邑楽先輩が好きなんです。邑楽柚月という一人の人間が好きなんです」
周りに聞こえないほどの小さな声で囁くように石川は言った。
「返事待ってます。それじゃあ先輩、また明日」
石川は一人駅に向かって行く。
作品名:毒の華 作家名:黒羽