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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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究極リアリティー小説家

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人里離れた旅館で殺人事件が起きた。

本庁の警察が到着するまでにはかなりの時間がかかり、
死体はどんどん悪くなり現場分析ができなくなる。

通報でやってきた刑事は頭を悩ませた。

「どうするか…このままじゃ事件は迷宮入りだ」

「どうやら私の出番のようですな」

やってきたのは旅館に泊まっていた小説家。
しかも、殺人事件のミステリーを専門としている。

「私はこれまでいくつもの殺人事件を書いてきた。
 犯人の思考パターンも頭に蓄積されています」

「でも、それって創作でしょう?
 実際の事件とはなんら関係が……」

「まあ見てなさい」

小説家は事件の状況と現場の荒れ具合をチェックした。

「ははぁ、わかりましたよ。
 犯人は糸とハサミを使って密室を作り上げた。
 犯行動機は、かなり突発的なものでしょうな」

「な、なぜそれがわかるんですか!」

「小説の中に同様のトリックがあるんですよ。
 私は自分の体験したことしか書けない。
 だから、同じ状況を見ればピンとくるんです」

「なるほど!」

小説家は部屋を見回り、被害者の持ち物をチェックする。
すると、あれよあれよと謎を解いていく。

「凶器はコレです。
 私の別の小説で同じくだりがありました」

「犯人は髪が長い人ですな。
 私の小説のひとつで同じトリックがありました」

「ここの血が取れている。
 私の小説と犯人の人物像が一致しているなら……」

小説家は旅館の女将を指さした。

「あなたが、犯人ですね。
 体のどこかに血の付いたハンカチがあるはずです」

「ちょっとあらためさせてもらいます」

警察が女将を調べ上げると、
小説家の言っていた通りハンカチが出てきた。

女将は観念したようにその場に崩れ落ちた。

「あの人が悪いのよ……。
 あの人が……旅館なのにテレビがないなんて言うから……」

「話は署で聞きます」

警察は女将に詰めたい手錠をかけた。
小説家は満足そうな顔をしていた。

「やはり、私の小説は正しかったようですね。
 リアルな創作というものはフィクションの壁を超えるのですよ」

「今回はありがとうございました。
 おかげで犯人を逮捕できました」

「大事なのは自分の経験を落とし込むことなんです。
 リアルな描写というのは実感がなければ書けない」

「経験があるんですね」
「ええ、もちろん」




事件が解決して数時間後、本庁の警察がやってきた。

「どうも、遅れてすみません。
 本庁の警察です。殺人事件の犯人が2人いると……」

「はい、私です」

女将が前に出た。

「あと、こいつです」

すかさず警官が小説家を指さした。


「未解決の連続殺人犯です。すぐに手錠を」