SAGAシリーズ-2009-
SAGA2 淡水珠
喉の奥の少し下の部分。
胸骨の間に挟まった小さな骨。
柔らかくて堅い小さな曲線。
湧きあがって、膨らんで、盛り上がり、
衝き上がるまま膨大な量が
どこまでも続く天空まで伸び上がり
薄い薄い青灰色の中へ揺らめくように広がって溶けた。
見上げた先に何が見えるのかも分らないのに
上げた顎の稜線はいつまでも瑞々しく
潤んだ瞳の奥に張り付く。
色も無くした記憶だけに留めても。
震える瞼がふいに落としたひとしずく
薄い薄い淡灰色の珠は刹那の内に遠退き弾けた。
作品名:SAGAシリーズ-2009- 作家名:筒井リョージ