WonderLand(下)
あたしがいろんなものを失っても、世界は何一つ変わらない。
あたしとウサギは、何事もなかったかのようにホテルを出て、ホテルの下にあるレストラン街で食事を取った。際立って美しいウサギと、化け物のように醜いあたしのカップルは、とても目立った。誰もが一度は振り返る。
さすがにあたしは食欲がなくて、スープを口にしただけだったけれど、ウサギはこの細い身体からは考えられないほどの量の料理を平らげた。それも、どれも肉料理ばかりだった。あたしは何度も吐きそうになったけれど、飲み込んで我慢した。
食事を終えたときには、既に九時半を回っていた。あたしはウサギに手を取られ、電車に乗り、WonderLandのある駅で降りた。
ウサギは、まさにWonderLandへ向かうようだった。
夜に歩く路地街は、昼間よりもずっと活気があった。様々な身なりの人々が行き交い、様々な言語が飛び交う。アルコールの匂い、煙草の煙、きつい香水の香り、色々な物が入り混じった街は、あたしの目に妖しく映った。
路地街を歩きながら、あたしはウサギにとってWonderLandがどういう場所なのだろうかと考えた。そう云えば、あたしはウサギのことを何も知らなかった。「あなたはあたしと同じ」と、ウサギは云ったけれど、彼女が抱える陰を、あたしは知らない。モモコという名前以外に、年齢も、何処に住んでいるのかも、普段何をして生活しているのかも、何も知らないのだ。
他の店が活気づいているにも関わらず、WonderLandは清閑としていた。中からは微かな灯りが見えるけれど、扉のところには以前リリーさんが教えてくれた「CLOSE」の札が掛かっている。
ウサギは、その札にもお構いなしに扉を開けた。扉は、開いていた。そのままずかずかと中へ入っていく。あたしは、慌ててその後を追った。
店内にリリーさんの姿はなかった。ウサギはカウンターをさっさと通り抜け、あの奥の扉へと向かった。
その扉を、思い切り蹴り上げる。扉は簡単に開き、其処にリリーさんの姿が在った。
リリーさんだけではなかった。知らない中年の男と一緒だった。二人とも、裸だった。正確に云うと、物音を察したらしい男の方は、シャツで大事なところを隠していた。
あたしとウサギは、何事もなかったかのようにホテルを出て、ホテルの下にあるレストラン街で食事を取った。際立って美しいウサギと、化け物のように醜いあたしのカップルは、とても目立った。誰もが一度は振り返る。
さすがにあたしは食欲がなくて、スープを口にしただけだったけれど、ウサギはこの細い身体からは考えられないほどの量の料理を平らげた。それも、どれも肉料理ばかりだった。あたしは何度も吐きそうになったけれど、飲み込んで我慢した。
食事を終えたときには、既に九時半を回っていた。あたしはウサギに手を取られ、電車に乗り、WonderLandのある駅で降りた。
ウサギは、まさにWonderLandへ向かうようだった。
夜に歩く路地街は、昼間よりもずっと活気があった。様々な身なりの人々が行き交い、様々な言語が飛び交う。アルコールの匂い、煙草の煙、きつい香水の香り、色々な物が入り混じった街は、あたしの目に妖しく映った。
路地街を歩きながら、あたしはウサギにとってWonderLandがどういう場所なのだろうかと考えた。そう云えば、あたしはウサギのことを何も知らなかった。「あなたはあたしと同じ」と、ウサギは云ったけれど、彼女が抱える陰を、あたしは知らない。モモコという名前以外に、年齢も、何処に住んでいるのかも、普段何をして生活しているのかも、何も知らないのだ。
他の店が活気づいているにも関わらず、WonderLandは清閑としていた。中からは微かな灯りが見えるけれど、扉のところには以前リリーさんが教えてくれた「CLOSE」の札が掛かっている。
ウサギは、その札にもお構いなしに扉を開けた。扉は、開いていた。そのままずかずかと中へ入っていく。あたしは、慌ててその後を追った。
店内にリリーさんの姿はなかった。ウサギはカウンターをさっさと通り抜け、あの奥の扉へと向かった。
その扉を、思い切り蹴り上げる。扉は簡単に開き、其処にリリーさんの姿が在った。
リリーさんだけではなかった。知らない中年の男と一緒だった。二人とも、裸だった。正確に云うと、物音を察したらしい男の方は、シャツで大事なところを隠していた。
作品名:WonderLand(下) 作家名:紅月一花