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かなりえずき
かなりえずき
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えずくほどの日常

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第1次 私服決戦



修学旅行をサボったわけで。


修学旅行といえば高校生活の一大イベントで、
しかも行き先がハワイともなれば高校生は1年で勉強で貯めたフラストレーションを
このハワイの青い海と空に発散するんだろう。


それをサボった。


てっきり修学旅行を休めば、
本来予定されていた8日ぶんの平日休暇がもらえる!
ひゃっほう! 平日の休みを満喫できるぜぇ!

と、よどんだ重い空の下日本の片隅でパーティできると思っていた。
そんなわけはない。

俺のよこしまな意図を先生が先読みしていたのか、
修学旅行を休んだ人たちはその人たちで学校に来させられる。

なんだこの新手のいじめ。
先生から率先してのいじめは許されるんですか!異議あり!


「では、明日は卓球をします」

初日は今後の学校で行われる疑似修学旅行の日程が話された。
それによると、明日はどうやら剣道場で6時間の卓球オリエンテーションだそうだ。


修行か!!

6時間の卓球って、どこの卓球名門校だよ!
卓球の中国代表選手だってここまでやらないよ!


「あ、でも授業ではないから私服で来ていいよ」

なにそのいらない自由!!

※ ※ ※

というわけで、俺はデート前日の彼女のように
翌日着ていく服の選定をすることになった。いじめか。

・卓球
・女子と合同

ポイントはこの2点。


あくまで本気に卓球をしてはいけない。
6時間持たないし、俺たちは完全な初対面同士。
さらに修学旅行をサボった共同生活不適合者たちなのだ。

向かい合って卓球をするなんて、
知らないおっさんとポッキーゲームするくらい難易度が高い。


「でも、かっこいい服ってなんだよ!?」

一応、俺の勝負服なるものは有事に備えて用意はされている。
でもこれを着ていったときの女子の評価はどうだろうか?


「あの人、めっちゃ女子意識しているーー」
「モテようと必死なのねーー」
「顔はいいのに、残念イケメンってやつよねーー」

となるに違いない。
当然、勝負服の使用は見送られる。

となると、ウィンドブレーカーだろうか。

中学時代の部活で来ていた運動着。
そこそこのファッション性もあり、これを着ていた俺に恋をして
でもそれを言えないまま卒業した女子もいたはずだろう。

おそらく、たぶん、きっと、かなりの確率で。

「……でも、これもどうなのか」

私服で来ていい、とお墨付きをいただいている以上
これを着ていけば「私服がそれかよ(笑)」と思われかねない。

ちげーし! 俺の私服じゃねーし!

と、否定するのもみっともない。

「どうするか……」

※ ※ ※

翌日、俺は学校指定のジャージで登校することになった。

これなら、
「私服じゃないですよ」と暗に主張できるうえ
「私服はもっとイケてますよ」と周りにアピールできる。

まさに完璧な伝説の鎧。
この結論に至れる勇者はほかにいないだろう。

せいぜいセンスのない私服を晒すがいい。
俺だけ向かい合う女子と恋愛のピンポンができるはずだ。


「よし、じゃあ全員集まれ――」

先生がやってくると、全員を集めた。


「なっ……」

見ると男子は全員学校指定ジャージで武装していた。
俺たちの単純で同じ思考パターンに俺は絶望した。


女子はみんな制服だった。

「先生、私ジャージ忘れました」
「私もジャージ忘れました」
「ジャージ忘れたので卓球できません」


どんだけ卓球やりたくないんだよ!!


ダサい服で必死に卓球する姿を男子に見られたくなかったのだろう。
女子は女子で集団催眠のように同じ理由でジャージを持ってこなかった。


地獄はここらか始まる。


「じゃあ男子だけで卓球してて」

先生は笑っていった。俺は泣いた。
作品名:えずくほどの日常 作家名:かなりえずき