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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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えずくほどの日常

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LINE始めました。



無料通話アプリLINEをはじめたわけで。


いったい誰に急かされたわけでもないのに、
電車でスマートに操作する姿にあこがれて購入したスマートフォン。

購入した後で、俺は電車に乗らなければ
安いスマートフォンだったためにタッチ操作がおぼつかず
さながらおじいちゃんが初めてTVリモコン操作するような姿になること知ったけど。

ほんで、LINEなんかを入れてみて
ウキウキしながら現代人の仲間入りを果たした自分に酔っていた。


「って着信こねぇぇ!!」


そもそもLINEに登録されている人がいないので、
俺のあこがれていた"悪ぃ、ちょっと友達から着信"的なのはできない。


そこで、中学からの友達に連絡を取った。

もし、俺が携帯をどこかに落としたりして
それを美人で巨乳なおねーさんが拾って「やだこの持ち主、友達いないわ」なんて思われたら心外だ。

この日本の最大の不幸は、
「友達いない」と「友達作らない」の区別ができない点だ。


>LINE入れてみたよーー連絡してね(^^)/


さながら、出会い系のサクラみたいな出だしになったがまあいいだろ。

きっと中学時代の友情を俺の意味深メッセージから読み取り、
ともにカメハメハが本当に打てると信じて疑わなかったあの黄金時代に思いをはせ
必ずや俺に連絡を取ってくれるはずなのだ。


ピロン♪

「来たぁぁぁ!!」


スマホをオープンしメッセージを確認する。
別に寂しかったとか人に飢えているとかではないけれど、
素早く返信することこそが紳士の務めであることを俺は幼少の時から心がけている。


>俺、はげてる?


「え゛」

友人からのメッセージは過去に思いをはせるどころか
現在進行形の話題をぶち込んできやがった。どうコメントしろと!?

メッセージと自撮りの写真がついてきたけど、
はっきり言ってハゲてるとかハゲてないとかわかるわけない。

画像は1枚しかないし、この角度じゃない場所から見たときにハゲてるかもしれないし。

「どうする……こういうメッセージを送るってことは少なからず気にしてるんだろうし……。
 いや、だからこそフォローするべきなのかも……」

銀行強盗のネゴシエーターもここまで悩まないだろというくらい悩んだ後、
俺はあたりさわりのないコメントを返してお茶を濁した。


>どうだろう? 俺にはわからないけど大丈夫だと思うよ


うん、われながらナイスな返しだと思う。
ウソをつかずに相手との関係を悪くしない。

友達いないから人に気を使う技術だけは無駄に上昇して、
今やどっかの政治家よりも失言回数少ないんじゃなかろうか。


>そうか。ありがと


ここで会話は終わった。
その後しばらくメッセージは来なくなった。


かに思えた。


>この帽子似合ってる?
>ツーブロックにしてみた
>タンクトップ買ってきた


友人はその後ことあるごとにファッションチェックを依頼するように。
そして、今も週に2度3度ほど自撮り付きで画像を送っている。

俺の返信はもちろん。



>どうだろう? 俺にはわからないけど大丈夫だと思うよ


現在、友人はテンガロンハットに筋肉ムキムキ
ツーブロックの髪型と秋なのにタンクトップという

おしゃれなのかホモなのかわからない
時代の最先端を突き進むファッションリーダーになっている。


おそらく、のちに俺が訴えられれば言い返す言葉もない。怖い。

作品名:えずくほどの日常 作家名:かなりえずき