「もう一つの戦争」 最終章1.
「裕美子さん、お元気ですか。幸一さんは立派に旅立たれたけど喜んでいいものか正直悩みました。ご両親も同じ思いです。一番辛い思いをしていることでしょうが気持ちをしっかりと持って美幸ちゃんを育てていってください。
いつか折を見て美幸ちゃんと一緒にこちらへ戻って来てほしいと願っています。幸一さんのご両親も強くそれを希望されています。暑さが本番を迎えるので身体を気遣って暮らしてください」
そう書かれてあった。
多分夫の両親に頼まれて女将が書いたのに違いない。
裕美子は返事を書いた。
そこには大久保しづとの縁を書いて、息子が戦地から戻ってくるまで傍に居たいと思いを綴った。
広島から悲報が届き、長崎からも悲報が届いた八月の十日、裕美子はしづに十五日に日本は無条件降伏をして戦争は終わると告げた。
それは誰も知らない秘密のことだったが、聞かされたしづは疑うことなく裕美子の顔を見て頷いた。
「裕美子さん、おまえさんは不思議な人だとずっと思ってきたが、ここに来た本当のわけをそろそろ話してくれないかね?訳もなく夫の赴任先に来たというんじゃないように思えるよ」
「はい、お気付きになられていたのですね。申し訳ありません」
「いや、叱っている訳じゃないんだよ。話さなくても構わないけど、話してくれたら嬉しいと思っただけ」
いつか折を見て美幸ちゃんと一緒にこちらへ戻って来てほしいと願っています。幸一さんのご両親も強くそれを希望されています。暑さが本番を迎えるので身体を気遣って暮らしてください」
そう書かれてあった。
多分夫の両親に頼まれて女将が書いたのに違いない。
裕美子は返事を書いた。
そこには大久保しづとの縁を書いて、息子が戦地から戻ってくるまで傍に居たいと思いを綴った。
広島から悲報が届き、長崎からも悲報が届いた八月の十日、裕美子はしづに十五日に日本は無条件降伏をして戦争は終わると告げた。
それは誰も知らない秘密のことだったが、聞かされたしづは疑うことなく裕美子の顔を見て頷いた。
「裕美子さん、おまえさんは不思議な人だとずっと思ってきたが、ここに来た本当のわけをそろそろ話してくれないかね?訳もなく夫の赴任先に来たというんじゃないように思えるよ」
「はい、お気付きになられていたのですね。申し訳ありません」
「いや、叱っている訳じゃないんだよ。話さなくても構わないけど、話してくれたら嬉しいと思っただけ」
作品名:「もう一つの戦争」 最終章1. 作家名:てっしゅう