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からっ風と、繭の郷の子守唄 11話~15話

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 カーブは47番から67番まで、20個余り続いていく。
難所は、別名「トナカイ・ヘアピンカーブ」と呼ばれている。
赤城山の登りで最大の難所だ。
トナカイのカーブ群をクリアすると、道はなだらかな登りの傾斜を取り戻す。
のこりのカーブは、あと5つ。

 山肌を尾根に向かって斜めに駆けあがると、最後のカーブへさしかかる。
標高1300mにある、最終カーブからの展望は素晴らしい。
さえぎるものは一切ない。
晴れていれば群馬県下はもちろん、遠くに埼玉と東京の市街地まで
見ることが出来る。


 トナカイ・ヘアピンの入口にさしかかった康平が、ブレーキをかける。
少し速度をゆるめたあと、右カーブに向かって自分の体を右へ傾けていく。
その瞬間。康平の動きにあわせて貞園も右へ体を傾けていく。
最初のカーブをすり抜けた瞬間、早くも次の左カーブが迫ってくる。

 ここから、カーブが更にきつくなる。
ぐるりと大きくクリアした瞬間、今度はS字のカーブが目の前にあらわれる。
康平が身体を傾ける前。貞園がカーブに合わせて先に身体を傾けていく。


 「うまいもんだな。いつのまにそんな高等テクニックを覚えたんだ?」


 「五六さんに、教授されたばかりです。
 ついでに、あなたに振られたら速攻で、俺のところへ来いと言われました。
 うふふ。口説かれてしまいました、初対面の殿方に・・・」


 「油断も隙もないなぁ・・・・君も、五六も。
 それにしても君は、カーブの反応がいいね。おかげで運転がし易くなった」


 「いいわよ。もう少し速度をあげてよ! 快適だもの、最高です~」


 「ワインをこぼすわけにいかないが、そいうことなら君の協力に甘えよう。
 久しぶりのランデブー走行だ。久しぶりに血が騒いできたぞ。
 筝と決まれば、遠慮はしない。いくぞ貞園。
 ここまでは抑えて橋ってきたが、ここから先は全開のアタックだ。
 最高到達地点まで、一気に登って行くぞ。
 後部座席から協力、よろしく頼むぜ!」


 「ねぇ、康平。ランデブーって、いったいどんな意味があるの?」


 「ランデブーは”あいびき”だ。いわゆるデートをするってことだな」

 

 「あら、いつのまにデートをしているの、私たち?」


 「このスクータに乗った時点から、俺たちのデートははじまっている。
 ランデブーの代わりに、タンデムという言い方をする。
 バイクに2人で乗るという意味だ。
 俺たちの呼吸もぴったりだ。
 このまま、もうひとつの最速のタイムがたたき出せそうだ。
 いくぜ貞園。俺たちはもう、怖いものなしの最強コンビだ!」
 

 「いいわよ、全開で飛ばしても。
 でもお願いだから、あたしのワインを、全部はこぼさないでね。
 あたし。スクーターの後部座席って、実はまったく初めての体験なのよねぇ、
 ホントは、少々怖いのだけど、うふっ・・・」