ひだまりのねこ
ルビーの指輪
小さい頃、母の手にはいつもルビーの指輪がはまっていた
金色のリングにハート型のルビー
炊事の時も、お風呂の時も、寝るときも
それはいつも薬指に収まっていて
幼い私はそれを見つめては
いつか大人になったら私もはめるのかな
なんて考えていた
ルビーの指輪は今私の手元にあって
母はもうこの世にはいない
金色のリングを見つめるたびに
パーマをあてた若い母が
ピンクのおんぶひもで弟を背負って
小さな私の手を握って
生鮮食品をを選んでいた姿が思い浮かぶ
いつの間にかその指輪は母の手から消えていたけど
遺品整理のさなかに見つけたそのきらめきは
優しい記憶とともによみがえる
時折、自分の指にはめてみるけれど
期待していたほどには似合わなくて
やっぱりあのパーマの、花柄の服を着ていた母の方がよく似合っていた
遺品にしたくないから
私の婚礼指輪と一緒に収めてあるルビーの指輪
あのころ思い描いてた大人に
いつかなれる日はくるのだろうか