カメラを向けられるとやっぱりカメラ目線…。
重たい顔を動かして少し揺らしてみた。
重量があるので揺れ方も重みのある揺れ方だった。
もう少しと思い揺らしたらひまわりに、
『折れる、折れる。』
と言われた。
“あっ、喋った…。”と手を止めた私は、次には感動していた。
“ひまわりが喋るなんて…嬉しすぎる…。トマトやニガウリなんかより、よっぽど嬉しい…。”と…。
揺らしちゃいけないので、揺らすのは止めた。
感動はしているものの、突っ立っているひまわりと、向き合っている私も何もする事がないので突っ立っていた。
そのしばらくの空気の中、ふと私は思った。
“ひまわりはどんな音がするのだろう…。”と…。
そして私は右手の甲をひまわりの顔の下に向けて、
『♪ひ・ま・わ・り・さん、トントントン♪』
と音に合わせて顔を叩いてみた。
想像もしてなかった音がひまわりの顔と茎から聞こえたので、私もひまわりも一瞬止まった。
喋るよりもその音があまりにもおかしかったので、ひまわりと目が合った瞬間に二人の大笑いが始まった。
二人でツボにハマりしばらく笑った。
畑で二人ツボにハマっていた。
周りの人が見たら、私一人がただ笑っている光景…。
それでも、笑いのツボに勝てずやっぱり笑った。
そして笑いながら、
『ひまわりから…音が…した~。ひまわりの…音~。初めて聴いた~。』
と必死で喋った。
ひまわりも肯きながら、
『私って…音がするんだね!!…知らなかった~。』
と言った。
私は尚も叩いたので、私はお腹を抱えひまわりは体を揺り動かし笑った。
その後ももう二、三回、
『♪ひ・ま・わ・り・さん、トントントン♪』
とひまわりを叩いた。
やっぱりおかしくて、おかしくてたまらなかった。
笑いすぎてお腹が痛くなった私は、叩くのを止めて笑いが止まるのを待った。
そして笑いも止まり、ひまわりも落ち着いたので写真を撮ることにした。
ひまわりは結構下を向いているので、下に潜るようにしてカメラを構えた。
そんな私にひまわりが、
『空ばっかり写るよ~。』
『撮りにくくてすみません。』
と言った。
何枚か撮った。
確かにバックの色は空だった。
それと三本の電線が写った。
それからは、畑でひまわりと目が合うと、ひまわりは合図をするかのように、
『♪ひ・ま・わ・り・さん、トントントン♪』
と自分から言っていた。
思い出すと二人で思い出し笑いをするのだった。
そして、お母さんの所へと戻り、野菜たちの話をした。
トマトが逆さまだとお母さんは知っていた。
私は、
『食べ頃で美味しいって。』
と伝えておいた。
その二日後、朝ごはんにそのトマトは登場した。
それはちゃんと美味しかった。
ニガウリの存在を伝えたところ、
『二つもあった?!…一つはあれかなぁ~とは思うんだけど…。』
と中途半端な回答だった。
ニガウリだってガックリするよなぁ~なんて思った。
スイカが一番ノリが良かった事を話したら、この事でお母さんが一番スイカを可愛がってるとまたもバレた。
お母さんに似たスイカが育った事を知ったら、
『野菜も育てる人に似るのね。』
とのことだった。
そんなお母さんもカメラを向けられるとすぐにポーズを取るのだから、あながち間違いじゃないのだろう。
作品名:カメラを向けられるとやっぱりカメラ目線…。 作家名:きんぎょ日和