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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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カメラを向けられるとやっぱりカメラ目線…。

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お母さん畑の話をブログに書くために、話を忘れちゃいけないと携帯で写真を撮ることにした。

野菜たちの成長をチェックしては写真を撮った。

グーの大きさくらいに育った大玉のトマトが五つかたまっていた。
まだ緑色なので食べ頃ではないけど、一応シャッターを押した。
『まだ食べ頃じゃないけど、重い…。幹が大変…。』
と一言。
見てみると、お母さんの適当加減がよく分かる。
紐で固定してないから、トマトの重さでそこだけ曲がり始めていた。
私は、
『ガンバレッ!!』
と一言声をかけた。
するとトマトたちから苦しげな声で、
『頑張る。…お母さん、必死…。』
と聞こえた。
こんな言い方だけど、実際はトマトたちだけじゃなくどの野菜たちも、お母さんの与えてくれた必死な環境を楽しんでるんだと思う。
どうして私はそう思ったのかと考えてみた。
ぅん~…、どの野菜も美味しいということは、この環境を嫌がってない…。
私はそう結論付けた。

『さてさて、ニガウリさんは…どうかなぁ~。』
生い茂った葉っぱの塊…、実が見当たらない…。
…いないのだろうか…、
『ニガウリさ~ん、いませんか~。』
と隣のトトロのまっくろくろすけに声をかけるように、そのマネをしてみた。
『いますよ~。』
葉っぱの中からこもった声がした。
ここの場面はトトロとは違った。
声のした所へ向かって葉っぱを掻き分けてみた。
『ぷはぁ~、見付かった。お母さんは知らないよ。』
まるまる太った大きな大きなニガウリがそこにいた。
私はもっとちゃんと葉っぱをどけながら、
『えーっ、お母さん知らないの?!こんなに大きいのに…。』
と言い返した。
『うん、気付いてないよ。』
ニガウリは当たり前にそう応えた。
『あらまぁ~。ちょっとブログ書くから写真撮らせて頂きます。』
と私は許可を取りシャッターを押した。
ニガウリはピシッと気を付けをし、カメラ目線で写真に写った。
写真を撮り終わり、
『どうも。お母さんに、ここにニガウリがいるって伝えておきます。』
とニガウリに伝え、掻き分けた葉っぱを閉めようとしたらニガウリが、
『あっ、閉めないで。そのまま開けておいて。ここ見て~、お腹真っ白~。太陽を浴びてないから真っ白なの。太陽を浴びたいから開けておいて。』
と言われたので、閉めようとした手を止め、葉っぱを閉めずそのまま、
『他にニガウリさ~ん、いませんか~。』
とまた同じように声をかけたら、写真を撮ったニガウリが、
『ありがとう。』
と言った。
私はそのニガウリに会釈し、他のニガウリの反応はないかと耳を傾けた。
するとまたこもったような小さな声で、
『ここにいま~す。』
と聞こえた。
最初のニガウリの二メートルほど左に、同じくらいまるまるしたニガウリがいた。
こちらも同じように葉っぱを掻き分けた。
そして、
『お母さん、気付いてない…。』
と一言、寂しそうに言った。
『あ~、こっちもかぁ~。…お母さんに伝えます。』
私は頭を抱えそう応えた。
『お願いします。』
とニガウリは挨拶するかのように応えた。
人間と違って、無駄な欲がないなぁ~と感じながら、葉っぱを綺麗に掻き分けた。
『写真撮りま~す。』
と言いながら私はカメラを向けた。
ニガウリは黙って直立不動になった。
そんなに堅くならなくても…と思いながら、二回シャッターを押した。
そして葉っぱを閉めようとしたら、
『あっ、閉めないで。』
とニガウリが慌てて言って来た。
“あっ。”と手を止めたら、
『こっちもお腹真っ白~。太陽を浴びてないの~。』
と言われた。
そのお腹を見て大きく肯けた。
うっすい黄緑色をした真ん丸なお腹を軽く撫でてあげて、葉っぱを閉めず次の野菜へ向かった。

ズッキーニの所へ足を向けた。
生い茂った大きな葉っぱを掻き分け、根元を覗き込みカメラを向けた。
ズッキーニが一言、
『食べ頃。』
とだけ言った。
私は肯き、お母さんに伝えると約束した。
そして次の野菜へと向かった。

次は、また違うトマトの所へと足を向けた。
葉っぱに隠れてチラ見している真っ赤なトマトが一つあった。
その中に手を突っ込み頭の方をヨシヨシをしたら、トマトがクスクス笑い出し、
『うふふふ、くすぐったい。』
と言うので、もっとヨシヨシしていたら、
『うふふふ、そこお尻。』
と言った。
その言葉で私の手は止まり、首を傾げたままその葉っぱの中を覗き込んだ。
『んっ?!』
何かが違う…と思った私に、
『ひっくり返ってるの~。反対向きで育った。』
と嬉しそうに笑いながらトマトはそう言った。
覗くのを止めて、葉っぱを少しずらしてみた。
『あらまっ!!反対っ!!…まさかお尻をヨシヨシしてたの~?!』
私は何故かショックだった。
『そう、お尻~。…恥ずかしっ!!お母さんに反対向きって伝えて~。あっ、でも美味しいよ~って言ってね~。』
トマトは私のショックなどどうでもよいようだった…。
逆さまのトマトにカメラを向けたら、
『お尻~。』
と言いながらトマトはお尻を振っていた。
なのでそのままを写してあげた。
ショックだったけど楽しいので、もう一度お尻をヨシヨシしたら、トマトがお尻を振りながらくすぐったそうにして喜んでるのを感じた。

そして次は、お母さんが大事に大事に育てているスイカの所へと向かった。
話しかけることもなく私はいきなりカメラを向け、画面を覗き込みシャッターを押そうとしたら、携帯の画面の真ん中に映っているスイカが、
『はい、みんな集まって~!!写真撮るよ~。』
とカメラ目線のまま全てのスイカに声をかけた。
シャッターを押すのを止めて、画面に向いていた目を本物のスイカに向けた。
…やっぱり言ってる…。
端っこにいるスイカは戸惑いながらもカメラ目線になった。
画面に全員入るかなぁ~と思いながら、また画面に目をやり二、三歩ほど下がると、しっかりみんなが入った。
ノリの良い最初のスイカはみんなに声をかけてるくせに、カメラ目線は変わらない。
こいつは自分大好き人間ならぬ、自分大好きスイカなんだと思った。
たぶんお母さんに似たんだろう…。
端っこの方にいる幾つかのスイカは、自分も入っていいのかなぁ~という思いでカメラの方を見ていた。
でもその中には、こそっとしっかりピースをしているスイカもいた。
“小心者だけどしっかりと存在をアピールする…。こんなタイプ人間にもたくさんいるなぁ~。スイカにもこんなタイプはいるんだなぁ~。”
そんな事を思いながら二回シャッターを切った。
それでもスイカたちもいろんな性格がいる中、仲間外れなどせずにみんな仲良くやっていると知れて私は安心した。
人間もこんな風に出来たらいいのになぁ~と思った瞬間だった。

そして次は野菜ではなく、ひまわりの所へと向かった。
二メートルなんて超えてしまったひまわりも花びらを散らせて、種を付けようとうなだれているそんな姿だった。
ひまわりの顔は太陽ではなく、畑に向いていた。
顔だけ茶色になってはいるが、茎や葉っぱはまだまだ綺麗な緑をしていた。
そんな顔の大きさは直径三十センチは超えていた。
こんなにもうなだれているので、話しかけても喋れないと思った私は、顔をヨシヨシと触った。
結構、トゲトゲだった。