「幸せの交換」 第十八話
ウソで、ダメ・・・と言った。イク・・・ではない。
少し胸とかお腹とかあそこを撫でながら、夫はにやにやしていた。
一人になった部屋で、夫の態度から、もし野口と関係して帰ってきたら自分の変化に気づかれはしないだろうかと考えた。
シャワーを浴びて石鹸の匂いがしたらまずい。自分では気づかない、いろんな匂いを付けて帰ってくるのもまずい。
そんなことを考えている自分が本当は一番まずい。
考え付いたことがあった。次に野口と会った日は帰り時間を少し遅めにして夫と子供たちと外食をしようと思った。それも匂いの強い焼肉を選ぼうと。
何と知恵が働くのか我ながら感心する。
もう一人の私は眠っている間でも体の中で妄想しているのだろうか。
朝起きるとあそこが湿っていた。初めてのことに驚かされた。覚えていない夢で濡らされてしまったのであろうか。不思議な体験だった。
それは女の身体に生まれた悲しさだろうか、悦びだろうか、選択をするのは自分のもう一つの女の心だ。
隠されているものが本心と言われる。では表向きの自分は偽り?
登志子は本心で野口とつながり直樹と別れた。
直樹は表向きで登志子とつながり本心でわたしと結婚した。
わたしは偽りで直樹と結婚した?だとしたらまだ本心でつながっていない。
野口とつながることは本心なのだろうか。
自問自答する。答えは次に野口と会った時に出るのかも知れない。
愛しているということは見返りを求めないことだと人は言う。
見返りが欲しい私は夫を愛していないのだろうか・・・
作品名:「幸せの交換」 第十八話 作家名:てっしゅう