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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「もう一つの戦争」 敗北と幸一の運命 6.

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「お孫さんはお亡くなりになられたのですか?」

「うん、そうじゃ。生まれたときから病気がちだったんじゃ。かわいそうに。
ここら辺じゃええ病院が無いから、乳吐いて飲まなくなった時にはどうしようもなくて。哀れじゃったよ・・・やせ細って」

そう話すと老婆は顔を手で覆って泣き出した。
裕美子は近寄り肩を擦りながらもらい泣きした。

「ありがとう。あんたの娘さんを見て孫のことを思い出した。ここで出会えたことはなにかの縁じゃとおもうて、仲良くしてくだされ」

「はい、こちらこそとても嬉しいです。お名前聞かせてください。申し遅れました。わたくしは伊豆修善寺から参りました、磯村裕美子と言います。娘は美幸です。夫はこの先の井水海軍航空隊所属の磯村中尉です」

「なんと、海軍さんの旦那さんなのか・・・わしは夫が満州で戦死、両親は共に若いころに相次いで病死して今は一人暮らししておる。息子が戦地に出向いているが、帰ってきてほしいと願うばかりじゃ。申し遅れたが名前は大久保しづと言う」

大久保しづ。何という響きだ。絶句してしまった。
これでは祖母から聞いた話と全く符合してしまうではないか。

「大久保様と言われましたね。まさかあの大久保利通様のご親戚筋でおられるのですか?」

「そうじゃよ。遠い親戚だけど、家系図は残っておるぞ。それが縁なのか代々この家の男は軍人になっている。戦争がここまで激しくなるとは思ってもみなんだが、これも運命なのだろうよ。話しているよりご飯じゃな・・・」

温かいご飯に漬物ではあったが心にしみる味がした。
裕美子はもう何も話せなくなっていた。それは押し寄せる自分と夫の運命がはっきりとしたからだ。