「もう一つの戦争」 敗北と幸一の運命 6.
「なるほど。それ阻止するために鹿児島へと行かれると言うことなんですね。しかし、向こうに行っても奥様がご主人を束縛するようなことは不可能だと思えますが、どうですか?」
「女子供も一緒になって闘うという雰囲気ですから、止めてなどと言えるはずがありません。娘を見せても思いが留まるということもあり得ないでしょう。私に何が出来るのかすぐには思いつきませんが、夫の傍に居ることがまずは第一歩だと思っています」
「お気持ちはわかりました。ご主人の武運を祈ります。お話しして戴いてありがとうございました」
「こちらこそ。あなた様もご無事でいらしてくださいね」
いつの間にか美幸は裕美子の膝の上で眠っていた。列車は九州に入り間もなく博多駅に到着した。辺りは薄暗くなっていた。夜行列車に乗り換えて、明日の早朝には鹿児島に着いていることだろう。
米内がくれた切符は神通力があった。車掌がどちらのお身内なのかと聞いてきたときに、紹介状を見せると必ず直立そして敬礼された。
当然一等車に乗せられる。周りはいつもそれなりの軍人と軍属が座っていた。
家から持ってきたおにぎりを一つ裕美子は食べた。弁当籠の中に残っていた小さな半分は美幸の食べ残しだ。朝まで起きないだろうと、それも口に入れた。
水筒のお茶も残り少なくなっていた。用足しが出来ないので飲まずに眠ることにした。
「女子供も一緒になって闘うという雰囲気ですから、止めてなどと言えるはずがありません。娘を見せても思いが留まるということもあり得ないでしょう。私に何が出来るのかすぐには思いつきませんが、夫の傍に居ることがまずは第一歩だと思っています」
「お気持ちはわかりました。ご主人の武運を祈ります。お話しして戴いてありがとうございました」
「こちらこそ。あなた様もご無事でいらしてくださいね」
いつの間にか美幸は裕美子の膝の上で眠っていた。列車は九州に入り間もなく博多駅に到着した。辺りは薄暗くなっていた。夜行列車に乗り換えて、明日の早朝には鹿児島に着いていることだろう。
米内がくれた切符は神通力があった。車掌がどちらのお身内なのかと聞いてきたときに、紹介状を見せると必ず直立そして敬礼された。
当然一等車に乗せられる。周りはいつもそれなりの軍人と軍属が座っていた。
家から持ってきたおにぎりを一つ裕美子は食べた。弁当籠の中に残っていた小さな半分は美幸の食べ残しだ。朝まで起きないだろうと、それも口に入れた。
水筒のお茶も残り少なくなっていた。用足しが出来ないので飲まずに眠ることにした。
作品名:「もう一つの戦争」 敗北と幸一の運命 6. 作家名:てっしゅう