小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

からっ風と、繭の郷の子守唄 第6話~第10話

INDEX|2ページ/15ページ|

次のページ前のページ
 


 バイクを語り出すと、店長の熱弁は止まらなくなる。
運転席に収まった康平が、ハンドルに手をかける。
握り心地を確かめた後、微笑みを浮かべて熱弁中の店長を振り返る。

 「250ccに乗るのは初めてです。
 なにか運転時に、特に心がけおくことがありますか。店長」

 「そうだな。お前さんの腕なら何ひとつ、心配はないだろう
 アドバイスというのなら、コーナリング時に、ちょっとした思いやりが
 必要だ。
 いつものように、頭から突っ込んでいくのはやめてくれ。
 鋭い侵入角度ではなく、やさしく優雅に旋回することを心がけてくれ。
 グラスの水を、縁(ふち)に沿って回していくようなイメージだ。
 くるりと柔らかく旋回していく・・・・できるよな、お前なら。
 そうだな。大きめのワイングラスに、良質のワインを70%くらいまで満たす。
 そいつを後部座席に置く。
 ワインをこぼさないように、常にゆったりと柔らかい操縦する。
 山道のカーブを、右に左に優雅に走り抜けていく・・・・
 それがフォルツァの持ち味を生かした、上手い運転操作だと思うぜ」

 「あら。・・・・ということは、後部座席に乗る私は、
 台湾からやってきた、上等なワインということになるのかしら?」


 「おう。まさにその通りだ。
 後部座席に座るお前さんは、台湾からやって来た最高級のワインそのものだ。
 康平。はるばる台湾から、やってきた大切なワインだ。
 乱暴に橋って、後部座席のワインをこぼすんじゃないぞ。
 わかったな。わかったら、もうさっさと走り出せ。
 快晴の赤城の山が呼んでるぞ。
 いいなぁ、若い連中は・・・・
 俺があと20歳も若ければ、今頃はもう、あの赤城の山の真ん中を、
 可愛いお嬢さんをうしろに乗せて、疾走している頃だろうに・・・・
 惜しいなぁ。まったく、あっはっは」


 セルを回すと、ホンダ独得の4サイクルエンジンが静かに起動する。
静寂なトルクが、心地よくシートを通じて全身に伝わってくる。
青いつなぎ服を着た店長が、ヘルメットの紐を締めている康平に向かって、
ビッグスクーターの性能を、あらためての説明している。


 「いまどきのビッグスクーターは、人気に後押しされて高機能化しているぞ。
 シフトモードは、通常走行用のD。スポーツ向けのS。7速マニュアル。
 ここまでは標準だが、このさきが凄い。
 スロットル操作に合わせて、自動でシフトチェンジが行われる
 オートシフトモードというやつが、装備されている。
 状況に応じて、自分好みの走りが選択できると言う訳だ。
 市街地ならDで充分だろう。
 山道や郊外ならスポーツモードのSがお薦めだ。
 事前の説明は、この程度で充分だろう。
 お前さんの腕なら、走っているうちに体で理解するだろう」

 店長が後部座席の貞園に、視線を向ける。