「幸せの交換」 第十四話
ちょっと気が引けたけど、夫に断って参加する決心をした。と言うか、断れる雰囲気ではなかったのだ。
最年長は課長でほぼ同い年、後は三十代と二十代の青年ばかり。結婚していたのは課長と三十代の一人と私で、残りは独身だった。
歓迎会が始まって、お酒がすすむ。私はあまり飲めないのでお酌を断りながら少しずつ飲んでいた。
「兵藤さんは、とてもお歳には見えませんから、ご主人が羨ましいですよ」
課長がそうつぶやいた。
「そう言って戴けてうれしいです。課長の奥様はどのような方なのですか?」
「おれか?うちは年上で今年五十五歳になる。もう現役引退だよ、ハハハ~」
「まあ、なんて失礼なことを・・・お可哀想ですわよ」
「本当だから仕方ないよ。向こうは女やめてるから。同じ女性とは思えないよ、兵藤さんとは」
「子供さんはお幾つなんですの?」
「上は女の子で去年に結婚したから、もうすぐ孫が生まれそうだよ。下はまだ独身だけど息子だからまだいいって思える」
「そうですか、家は上が息子で下が娘ですの。逆ですわね」
「そうなの?娘さんはいくつなの?」
「今度成人式です」
「若いね。きっと美人だろうな、兵藤さんに似て」
「いえ、夫に似ていると言われますよ。息子はわたし似ですけど」
「そう、じゃあ息子さんはイケメンだ、モテるだろうね」
「どうでしょう、彼女らしき人は居るようですが」
「お母さんとしてはちょっと心配って感じなのかな?」
「息子のことですか?いえ、全然心配なんかしていませんよ。男の子だし自由にすればいいって思います」
「母親は息子可愛いっていうしね。うちなんかもそう。きっと結婚したらお嫁さんに嫌われるタイプだと思える」
「そこまで心配されても仕方ないと思いますけど」
「だよね。なんか俺ばっかし喋っちゃったなあ~お前らなんか話せよ」
課長は部下の男子社員にそう言った。
作品名:「幸せの交換」 第十四話 作家名:てっしゅう