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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「もう一つの戦争」 敗北と幸一の運命 4.

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「裕美子さん、決意は固いのね。分かったわ。兄に話してあなたたちが無事に鹿児島まで行けるようにお願いしてみる」

「ありがとうございます」

女将の腹違いの兄は米内といって海軍大臣になる人物だ。亡くなった山本五十六とも親交を深めていた。女将の頼みそして山本と親しくしていた裕美子の願いとあらば捨て置くことはないと思えた。

一月もしないうちに米内からの使いの海軍兵が訪ねて来て、封筒を手渡した。
この時代郵便物も検閲を受けるから危惧して米内は内緒で届けさせたのだ。
開封すると、中には米内直筆の出水基地司令官宛の紹介状と、政府特権の配給切符(今で言う無料パス)が入っていた。

手紙が添えられていて、幸一を激励してやってほしいと書かれてあった。
感謝状を認めて女将に渡し、玄関で待たせていた兵士に手渡した。

こうしてこの年の十一月一日に裕美子は美幸を引き連れて大きなカバンを一つ手に持って修善寺を後にした。