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ヴァリング軍第11小隊の軌跡(仮)

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  会議室

 
 宰相の雪之、司令官のカウン・ソーニァ、軍総隊長兼第1小隊隊長の鷹未の3人を中心に添えて、各隊の隊長達が集まっていた。真暗に閉ざされ、3人を囲うようにシルエットだけが11人並ぶ。
 カウンがまず話す。



「今夜の議題は【第11小隊】だ。各自、話したまえ」

『11小隊を復活させるのはいいが、メンツはアレでいいのか?』

『確かに。子供ばかりではないか…』

『まずは各隊に散りばめさせて経験を積んでからの方がいいのではないか?』

『…雪之氏、貴女の娘は大丈夫なのですか?』

「何がです」

『小隊長としてです』

「まだまだでしょう」

『ならば何故……未熟な者を隊長に?』

「ああ、それは僕がしたんだ」とカウンが口を挟んだ。

『…傀儡程度が軍の采配をしたのですか?』

「ああ。その方が贔屓がないでしょう。雪之さんがしたら“自分の子供だから”と皆さん思ったでしょう?」

『しかし…』

「それに彼女は自身が望んでいなくても軍の中にコネがあるのは確かだ。だから万が一、11小隊だけで解決出来ない事態に陥りそうな時などにそのコネを使って雪之さんや真琴さんに頼み事や相談が出来るだろう?」

『小隊長が相談や頼み事ですか…?』

「貴方達は一度もしなかったのですか?僕は司令官になってからというもの雪之さんや鷹未さんに沢山迷惑掛けてますよ」

『何故貴男のような人が我等の司令官なのか理解不能です』
 そこに今まで黙っていた鷹未が口を挟んだ。

「おい、誰に向かって口を利いている」

「まあまあ鷹未さん、本当の事だから。あとメンツの事なら葵さんと仁さんにお墨付きを貰ってますので大丈夫ですよ」

『ラッパ師は一般人と聴いたが大丈夫なのか?』

「通信士の資格取りましたよ?」

『しかし…各隊の通信士と連携が取れるのか?』

「それはこれから次第でしょう。それにラッパの腕前は軍のトップを張る第3小隊のラッパ師・夕華さんに並ぶ腕前ともっぱらの噂ですよ」

『トップの人間が噂程度で判断しないで頂きたい。それは夕華に対して無礼であると知れ』

「では噂ではなく事実と言った方が良かったですか?第3小隊小隊長殿」

『……っ……!貴様!!』



 その時、とてつもない殺気が会議室を襲った。
 殺気の主は鷹未だった。
 鷹未は明らかにシルエット越しに第3小隊小隊長を睨んでいた。
 雪之が口を挟んだ。



「皆方、少し落ち着きましょう。鷹未もその殺気を消しなさい。そして榎多・マキシ、口を慎みなさい。司令官への口の聞き方ではないですよ、貴男。11小隊のラッパ師である樹音・ヒサカタに関しては既に通信士の試験の時に私共3人、それて夕華・ミチルがその腕前を現軍のトップと評価しました。疑うなら帰った後、彼女に直接お聞きください。そして他の隊員達もそれぞれ中々の曲者揃いで年齢だけで判断するのは如何なものかと思います。彼等が未熟な事など我々は充分に承知の上です。しかし彼等は入団試験を突破し、厳しい訓練でも各教官からお墨付きを貰っています。だから今は信じましょう」

『…信じる…?』

「ええ。これからの軍を支える事になるであろう新たな可能性を…。私からは以上です」
 雪之が一気に話を纏め、誰一人黙った。
 そして会議が終了したのだった。