プリンススの野望 ~性別無き世界への飛躍~
剣術士「何を言っている。これは邪剣だ。御託はどうでもいい。さぁ、いざ陣乗に───(傘をくるくる回し、勢い余ってすねに当たる)あいたッ。」
盗賊「ンフフ、やってしまいましたなぁ。」
魔法使い「格好つけたはいいものの。」
錬金術師「すねにぶつけたな、傘を。」
勇者「なぁ、体の調子悪いみたいだから、準備体操でもしたらどうだ?」
剣術士「そういえばし忘れていた。では少しばかり時間をくれ。」
(剣術士、準備体操し始める)
魔法使い「にしても、あの人合わせて、出てきた敵が二人ってどうかしてるよね。」
剣術士「(体操しながら)ああ、それはだな、魔王様が人件費を払えなくなってしまったからだ。」
盗賊「ンッンー。経済的に壊滅的だったんですなぁ。」
勇者「そりゃ無能が残るわけだ。」
剣術士「(前後屈をしながら)よし、そろそろ終わる───ぐぽっ!」
錬金術師「どうしたんだ?一体。」
剣術士「ぎっくり腰だ。(イナバウアーの体勢)」
勇者「なら仕方ない(走る構えをする)」
魔法使い「先に行くしか(走る構えをする)」
盗賊「ありませんなぁ。ンッフッフ。(走る構えをする)」
錬金術師「さらばだ!(走る構えをする、他三人は走ろうと少し動く)それじゃあ(四人で合わせて走り出す)」
(四人、退場)
剣術士「お、おい!待ってくれ!俺はいつまでこの体勢してればいいんだ!」
(暗転。 場面転換 魔王城門前→魔王城内 魔王が鎮座。その右隣に魔女。明転。)
勇者「たのもう~~!」
(四人、登場)
魔王「来たか。」
勇者「姫はどこだ!?」
魔王「姫?ああ、お前からしたら姫だったか。」
勇者「何をわけわからんことを!姫を出せ!」
魔王「そんなに会いたいか?仕方ない。おい、連れてこい。」
(魔女、拘束された王子を上手から引っ張り出す)
勇者「ひ、姫!魔王、てめぇ!貴様にそんな趣味があったとはなぁ!」
魔王「ククク、喚け喚け。」
勇者「姫、今から助けます!」
魔王「そう簡単に助けられるかな?」
勇者「黙れ!俺はあの森で姫と会った時から運命を感じたんだ!そこで、切っても切れない赤い糸が結ばれたと感じた!だからこそ、俺は必ず姫を助け出し、姫のお父様に、王家に泥を塗ってすみませんって一緒に謝りに行くまで、俺はここから離れない!」
王子「なな、何言ってんだあいつは。そんなこと言われたら───いやいや、あいつは男だ。」
魔法使い「ヒュー、言うねー。」
盗賊「まああれ、この王の間に来る前、何十回も練習してましたからねぇ。ンッフー。」
錬金術師「気持ち悪いぞ。正直。」
魔王「いやぁ、聞いてるこっちが恥ずかしくなるなぁ。」
魔法・錬・盗「激しく同意」
王子「そんなわけないだろ!」
魔王「ふぅむ、そうか───(懐から録音機を取り出す)これで、貴様がどれだけ恥ずかしいことを言ったのかもう一度教えてやる。(録音機、起動)」
(先程の王子のプロポーズが流れる)
王子「(流れている途中で)はずかしく───なんか、な───いやあああああ!もう止めてぇぇええええ!(しゃがみこむ)」
魔王「ハッハッハ!いやぁ、滑稽滑稽。」
魔女「魔王様、案外(強調)やるわね。」
(勇者、頭を抑えながら立ち上がる)
勇者「魔王、貴様よくもぉ。」
魔王「ほう、今のを耐えるか。フン、まぁお楽しみはこれからだ。さあ来い!」
勇者「うらあああああああ!(魔王に迫る)」
魔女「(魔王の前に立ちはだかり)そうはさせないわ。魔王様を倒すなら、あたしを倒してからにしなさい。」
盗賊「んほっほう。魔女たん可愛いですなぁ。(カメラを構え、フラッシュをたく)」
魔女「いやッ強い光はッ(目をつぶり、顔を手で覆う)」
錬金術師「今だ!隠し芸、テーブルクロス引き!(魔女の下のレッドカーペットを引く)」
(魔女、こけて尻餅ついた拍子にお尻の骨を骨折)
魔法使い「勇者様、スキッピー!」
(勇者、スキップしながら高い位置に座っている魔王に向かって斬りかかる)
魔王「な、おい、ちょ、まッ───あべしっ!(勇者に斬られる)」
勇者「(王子の元へ駆け寄り)姫、大丈夫ですか?(拘束を解きながら)お怪我はないですか?」
王子「(裏声で)え、ええ大丈夫よ。あのね、実は私───」
勇者「さあ、王様が待ってます。早く帰りますよ(手を差し伸べる)」
(王子、差し伸べられた手に自分の手を重ねる)
(暗転。 場面転換 魔王城内→王城内)
(王城で挙式、花嫁は王子、花婿は勇者。立会人は王様。)
王様「(カタコトで)花嫁、あなたは、花婿を、雨の日も風の日も、どんな困難が来ようとも永遠に愛することを誓いますか?」
王子「はい、誓います。」
王様「(カタコトで)花婿、あなたは、花嫁を、男であろうと、女であろうと、中途半端な性別であろうと、永遠に愛することを誓いますか?」
勇者「はい、僕は男でもあり、女でもある、この国のプリンスでもあり、プリンセスでもある、プリンススを永遠に愛すると誓います。」
王様「それでは、近いのキスを───と思ったがダメぇー!(咳払い)では、ここで挙式を終わります。」
勇者「(拍手を送られる中)愛さえあれば、性別なんて関係ありません!僕らの愛は永遠に不滅です!」
(暗転。 薄暗がりの中ピンスポで王様に当てる)
(王様、女物の服を着ようと試みる)
(王子登場。ピンスポ当てる。)
王子「父上?」
(王様、すぐさま王子の方を振り向く)
王様「こ、これはだなぁ、あのぉ───」
王子「ようこそ、こっちの世界へ。」
(二人に当ててるピンスポ、光を段々弱くしていく)
終幕
作品名:プリンススの野望 ~性別無き世界への飛躍~ 作家名:窓際ライター