恋と友情
幸いなことに、両方とも服は着ていたし、これからこの家を出れば、なじみのイタリアンレストランには6時にはたどり着くことができるだろう。
少し風が冷たく抜けるような気がする下半身のことを気にしないようにしながら、私と未翼は玄関を出た。
なんとなく、手をつないでいた。
肩を抱いたりするのではなく、じゃれついたりするわけでもなく、ただただ、手をつないでいた。
少し肌寒くて、先ほどまで彼女の目の上に巻いていたスカーフを首に巻く。
指先に、彼女の目元にあるものと同じ、アイシャドウのラメがこびりついた。
彼女のものになったようで、残念なような嬉しいような気分だった。
「朋奈のことも、愛してあげて」
私は気付いたらそんなことを言っていた。
即座に、未翼から言葉が飛んでくる。
「ずっと愛しているわよ、言われなくても」
その言葉に、嬉しさも思えば複雑な気持ちも覚えることができる。
きっと、お互いが今、そんな気持ちでいっぱいなのだと、この繋がった指先から、掌からも感じることができる。
今からの時間は、とりあえず、友だちに戻ろう。
そう思いながら、私も、そして、きっと未翼も、強く手を握った。