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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「もう一つの戦争」 敗北と幸一の運命 2.

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幸一は五十六の言葉通りに中尉に昇進して海軍航空隊の操縦指揮官として全国の基地を巡回していたが、年が明けて昭和十八年に新しく鹿児島県出水(いずみ)郡出水町に開隊予定の「出水海軍航空隊」への転属を命じられた。
桜の花が咲き誇る正門前の通りでの花見は兵士たちのひと時の骨休みになっていた。

四月一日に建立された神社に武運を祈るために幸一は訪れていた。

「中尉、ここは海軍の陸練操縦訓練教育の中心となるだろう。心得て励め」

そう忠告したのは同行して参拝した、基地司令美濃部貞功大佐だった。
基地には練習航空隊として予備学生、甲種予科練などが集められた。

もうすぐ一歳の誕生日を迎える裕美子の娘美幸はよちよち歩きで旅館内を危なっかしく歩き回っていた。女将の信子も孫のように可愛く感じて相手をしていた。
食料のほとんどが配給制となり、衣服も切符制となり不自由な暮らしを田舎でも強いられるようになっていたが、それより時折巡回してくる隣組のスローガン、「欲しがりません、勝つまでは」の言葉が耳について不快な思いを感じていた。