すてきなあなたに憧れて2
東田直樹さん
東田直樹さんの本を読んでいます。
虚栄や歪曲のないまっすぐな文章を書かれます。
自らの体験から物事の本質を見抜き、それを読者に伝えられています。
私の好きな、憧れの作家のお一人です。
彼は重度の自閉症者(と、本では紹介されています)で話し言葉はあまり得意ではありません。
しかし、とても豊かな思考と表現力を持っていて、パソコンや文字盤ポインティング等を駆使して自らの内面を表していきます。
重度の自閉症者と関わったことのある人なら、彼の文章を読んでとても驚くと思います。
私はたまたま仕事で自閉症の人たちと関わる機会があり、彼の本(すでに何冊か発売されています)に出てくる「場面」はよく理解できます。
ただ、場面は理解できても「その時当事者が何を考えているのか」については私の想像の域をはるかに超えています。
彼の文章によってわかり、気付きました。
私たちは自閉症者も含めた障害のある人たちの内面に対して、大きな誤解をしていると言わざるをえません。
彼も私も同じ思考を持つ人間なのです。
近年、世間一般にも「自閉症スペクトラム」という言葉が広まってきました。
「発達障害」や「アスペ(ルガー症候群)」という言葉も聞いたことがあるのでないでしょうか。
人間というものはカテゴライズすることが大好きです。
貧富、貴賤、男女、学歴、居所、体格、人種、そして障害。
でも「スペクトラム」とは「連続体」という意味で、明確に区別することは難しい、という解釈になります。
(自閉症も含め)人間の状態とは常に流動的で連続体で、本来はカテゴライズなどできないはずなのです。
障害や差別に関する私の知識は浅いのですが、この解釈には共感します。
加えて言うなら、社会生活を営む上において人は誰しも「生きづらさ(=障害)」を持っています。
その発現度によって変わってくるだけなのだと思います。
彼は「重度の自閉症者」という表現で説明されていますがそれは「私たちに比べて強い」というぐらいの意味で捉えた方が良いのかもしれません。
だから彼も私も同じです。
これは東田さんの文章がバシバシと伝えてくる、一つの主題だと思っています。
「わかるわかる!」とつぶやきながら読める点は、他の随筆と何ら変わりありません。
よくぞ私のこの苦しい気持ちを表現してくれた!と思う事もしばしばです。
ただ、言葉の広まりとともに「私アスぺだから」とファッション的に(というか言い訳的に)言葉を使う人がいるのは残念なことです。
私もつい使ってしまうことがあり、これは反省すべきところです。
関わる人たちに共感したいという思いから使いがちです(実際共感しているのですが…例えばゆで卵は味ではなく食感が苦手で食べにくい、など)。
しかし当事者にすれば、これまでの人生でいかに苦しい思いをしてきたか、体験もせずに言うなといったところでしょう。
東田直樹さんの本は、障害など関係なく、物事の本質をただまっすぐに表現している本です。
ぜひ多くの人に読んでいただきたい本です。
作品名:すてきなあなたに憧れて2 作家名:さかいあきこ