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ゼロ´

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非世界から吐き出された器としての私性
一滴の光でさえも顔料にして
熟したひだの内側へと塗り込んでゆく
ゆらめく環としての仮性植物
突起した肉からしたたる千草色の液
私は世界のあらゆる空に押し込まれて
たたずむ影を毛羽立たせる
明け方を区切る金属製の罪を
張り出した頬からそぎ落としてゆくと
硬くひびく腸のなかに
炎々たるせせらぎが生まれる
私は満ちるそして非世界を投擲する
それは君の肌を沸き立たせて
世界として散りはじめる 

非世界から抜き取られた歯としての私性
姻族である獏たちから色を集めて
はためく憎悪を照り返してゆく
君は放射性の爪を羞じているので
それが繁殖させる土音を噛んでゆく
いくすじもの記憶がつどう仮性火山
こごえた繊毛から立ちのぼる柿色の波
蒸留の地へと向かう橋の途上で
循環する水でできた猿が私を略取する
私は高さとなり手指を熱くとがらせるが
貫くべき氷原もなく風に巻き取られてゆく
水銀の地へとふたたび食い込み
非世界が肝臓にふれるごとに私は
狂わせるべき感覚をまちがえる

非世界から流れ落ちた酸としての私性
飛散する脳のつぶてを青く溶かし込み
名づけようとする眼から歌草を匿してゆく
君というひとつの切り立つ臓器に
壊れ続ける舌々を刺してゆけば
赤く死んだ腕から放散されるなめらかな悪
遠方へとこぼれ落ちてゆく仮性油脂
溶かされず泣き続ける伽羅色の粒
私の眼のなかには情火が差し込み
背中の湖が割れたことを告げる
私は形を得た額に堰き止められて
血のなかに闇を溶くことができない
君の塩基の川を中和するとあなたが生まれ
非世界は一抹の未来を嘲笑う

非世界から写し取られた画としての私性
暴かれた太陽がたえず複写し続けるので
自らを折りたたみ精密な歯ぎしりをはじめる
深みを帯びた影としての仮性水面
噴きあがり空をなめつくす鴇羽色の火
私の夜は分裂するそして起ち上がる
私の手のひらには涼やかな闇が映り込み
世界の夕暮れを抱き込んでゆく
私は波立ち君は私のなかに飛び込むが
私はただちに聖像のまなざしで君を殺害し
君は自分が飛び込まなかったことに気づく
私は組み敷かれた原人の上で美しく矛盾する
世界の巧緻を前にしてあざやかに嘔吐する
そして非世界を切断して貝の夢を見る

作品名:ゼロ´ 作家名:Beamte