ゼロ´
雨
この瞬間に降っている雨粒を
どこまでも遠くへとつないでいく
知らない街のマンションの屋上で
雨粒は途切れていた
雨が降っていない街の
日差しはとても悪意に満ちて
雨が降っていても
雨粒は限られた空間しか満たさない
雨粒の無い空間のほうが圧倒的に広い
だから雨が降っていても
ほとんど雨は降っていない
それなのにアスファルトは真っ黒に濡れ
雨粒は空中でも破裂する
そのときの音が雨音なのだ
空間の敏感な部分を
侵してしまった罪悪感に耐え切れず
雨粒はみずから破裂するのだ
雨粒の破片は新しい雨粒となって
無限に破裂を繰り返す
雨粒をいくつ集めれば
雨になるのかわからない
とりあえず雨の筋は一種の針であって
地面を刺したときににじみ出る地面の液が
地面を濡らしていくのだということは
わかっている
雨の筋という針が一斉に倒れてきたら
僕に逃げ場はない