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ゼロ´

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善悪の部屋



指をすりつぶす音が水になる。椅子にはびっしり僕の名前が書いてある。妄想のわりにはよく動く左足だ。下半身を覆う毛布の毛束は鱗のようで、撫でると白くなり、逆に撫でるともとの緑になる。君は社会の群れを見たことがあるか。足をずるずる引きずって歩く社会の群れを。机の上には書類の輪郭がある。善悪の直線にはもう飽きた。僕は額に垂れ下がってきた髪をわきに寄せる。書類の輪郭に手を通し、文字を指ではじくと、文章は新しく組みかえられる。友人から預かった辞書には、「正義」の一項目だけしかなく、その定義だけで1028ページを費やしている。夢がたるみすぎるとき、夢は痕跡だけが鮮やかで、僕の右脚に不快感を残す。指があと21本足りない。毛布は叫びたがっているが、口がないのでどこから叫んでよいか分からない。僕の脚が静止しながらも微細に揺れるとき、毛布はそれに従うだけである。僕は立ち上がり、窓から外を見る。相変わらずの日光の行進ぶりだ。庭木は形と音と匂いを忘れ、かろうじて色だけを覚えている。日光の吐き棄てた唾が葉の表面で光っている。看板の裏側は歯痛で覆われている。砂利の隙間を洗濯する、敗訴したウィルスたち。善悪の音節は少しずつ粒化していく。疲れた政治が花弁を撒き散らす。再び部屋の中央へと戻り、床板に統治される。椅子を構成する力が一瞬見えなくなって、椅子に座るのがためらわれる。椅子は極めて材木的に力を創り出したので、再び僕は椅子と肉体関係を結ぶ。君の美しい笑顔は僕を激怒させたものだった。君は白紙に捨てられた文字たちを拾い集めて新しい白紙を創り出す算術を知っているか。善悪の樹木からは血の果実が落ちていく。机の上には鉛筆の重さがある。僕は鉛筆のヒエラルキーに参加してみる。僕は常に#国と*国の国境であり続け、戦争は僕の皮膚の上を走り回る。すりつぶされた指にはショウガを入れるといいよ。とても概念的になるから。カップを手に取り犯罪の絞り汁を飲むと、緑茶の味がした。カフェインという公権力が犯罪を養分にして増殖したのだ。君はよく優しい鹿たちの脚のずれるリズムについて髪をざわめかせたね。僕は机をひっくり返す。飛び散った書類の輪郭が部屋の壁を削除する。転がり落ちた鉛筆の重さが床板を殲滅する。善悪の部屋は初めから存在していなかった。僕は雑草を踏みつけ、昨日の直線と明日の直線とが作り出す角度を正確に測ってみる。

作品名:ゼロ´ 作家名:Beamte