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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「もう一つの戦争」 敗北と幸一の運命 1.

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風呂場に向かう五十六の後姿はもう初老のどこにでもいるような男性にしか見えなかった。
女将は傍で今夜はお慰めしようと強く決心した。
温泉に浸かった五十六は幸一にミッドウェーでのことを語りだした。

「南雲は判断を誤った。敵機動部隊を発見した時点ですぐに全機発進すべきだったのだ。山口がしつこく奏上したように爆弾攻撃で敵空母の甲板を潰せば、あとは私の戦艦大和の主砲で撃沈させたものを・・・」

「長官、そのことでありますが、どうして中将殿はためらってしまわれたのでしょう?」

「南雲は真珠湾の時もそうであったが、元来アメリカと本気で戦うことを嫌っておった。そういう甘い考えが判断を鈍らせたのだろう。私が赤城に搭乗すべきだった」

「少将殿はどのような最後であられたのかお聞きになっておられますか?」

「少尉、お前の悲しみは俺の悲しみだ。こんな歌を書いてやつを偲んだ」

『燃え狂ふ焔を浴みて艦橋に
 立ち尽くせしわが提督は
 海の子の雄々しく踏みて
 来にしみちに
 君立ち尽くし神上りましぬ』

紅蓮の炎渦巻く空母飛龍艦上に第二航空戦隊司令官山口多聞少将は艦長加来止男(かくとめお)大佐とともに佇立していた。