連載小説「六連星(むつらぼし)」第86話~第90話
こうした道を辿りながら、抗議活動はさらなる盛り上げを見せる。
5月の最初の週の呼びかけで、ボタンを押した人は5700人を越えた。
デモ参加者は、4000人を越えるまでに発展する。
自然発生的に集まってきた人たちは、官邸前で口々に怒りをこめて
「大飯原発の再稼働は即時やめよ」「日本の未来を脅かす暴挙を首相は
即刻やめよ」の大シュピレヒコ―ルを、繰り返す。
参加した一人ひとりがさらにツイートを重ねることで抗議の波は、
さらにひるむことなく、大きく広がっていく。
「それはまた、実に平和的で、実に美しいデモ行進の姿です」
と亜希子が、さらに文章を続ける。
デモの集まりは、政党や労組などが組織的に動員したものではない。
知らない者たちがひとつの目的に向かって、ツイッタ―の呼びかけに応え、
それぞれの想いを胸に、三々五々と集まって来たものだ。
「原発反対」や「大飯の再稼働を許すな」を叫ぶ声は、激しい。
だが同時に大勢の人たちは、美しく整然と行動する。
デモの参加者とそれを制圧する警察との間で、暴力沙汰が発生しても
おかしくない。
だがデモの参加者たちは、警察の指示におとなしく従い、
常に整然としたまま、行動をしていく。
立ち止まると渋滞するから歩き続けてくださいと、警官がマイクで
注意を喚起する。
デモを主導する者たちも、警察の指示を守るように呼びかける。
参加者たちもそれらの指示を守り、粛々と行動していく。
「こんなにも平和的でかつ美しいデモは、世界ひろしといえども、
おそらく日本だけだと思います。
しかしデモ隊の主張は、きわめて過激です。
平和な日本の未来のために、すべての原発の、即時の廃棄を求めています。
大飯の再稼働を目論む、野田政権の退陣も大きな声で要求しています。
主導者が存在していないデモや、特定の政党や組織が主導していない
こうしたデモが、果たして、政治を動かせるかどうかは不明です。
しかし。このあまりにも美しく整然とした抗議活動の波はすでに決して
止めることが出来ない、社会現象になりました。
昨日は、官邸前のデモの参加者が1万2000人を越えました。
拡散のボタンを押した人数も、すでに8600人を越えています。
この勢いは、とどまるところを知りません。
今週末には、2万人を越えるデモが予想されています。
あなたも是非、参加してください。
山本さんの遺骨を持って、若狭へ行くそうですが私たちが、
首相官邸の前から、あなたを送り出したいと考えています。
多くの方が、貴方が書いている「原発労働者の記録より」の読者です。
ツイッタ―から始まった反原発のうねりは、今や大きな社会現象に
なりました。
若狭への出発点は、大飯原発の再稼働に反対している官邸前の歩道の上だと、
私は固く信じています。
勇気を持って、今週末に官邸前の歩道へきてください。
2万人を越える人たちが、あなたを若狭へ送り出してくれるでしょう。
みんながひとつの希望のために、ここへ集結してくるのです
原発反対を力強く訴えているあなたの作品は、みんなが心から求めている、
たたかうための希望になりました。
あなたの行動は、おおくの人々の共感をさらに生みだすでしょう。
笑顔でやってきてください。
官邸前の歩道の上で、わたしたちは、再び会いましょう!」
作品名:連載小説「六連星(むつらぼし)」第86話~第90話 作家名:落合順平