「もう一つの戦争」 開戦と子育て 2
「お父様もお母様もそのように堅苦しくなされぬよう。今日は忍びで来ておることだし、気軽に話そうではありませんか」
「はい、ありがとうございます。そうさせて戴きます」
テーブルに座った米内に女将が声をかけた。
「お兄さま、山本様はお元気にされていますか?この頃お見えにならないので心配しております」
「司令官はこのたび連合艦隊司令長官に再任された。今は忙しくてここには来れないだろう。だから私が代わりに来たようなものだ。ハハハ」
「そうでしたか。それはおめでとうございますとお伝えください」
「わかった。それよりお前はこの先どうするんだ?まだ一人だろう」
「そんなこと考えたこともないです。ここで楽しく過ごしてきましたからね」
「満州で開拓団が嫁を募集している。あそこは日本より食べるものも、生活する環境も豊かだぞ。少し寒いのが気にかかるが、いい相手が見つかれば考えてみたらどうだ?」
「満州?そんなところへ一人で行けと言われるのですか?考えたくありません」
「一人でじゃなく、相手を見つけたらと言っておるのだぞ」
「このまま独身で構いません。お兄さんには迷惑をお掛けしないようにしますから」
「相変わらずだなあ~司令官がそんなに好きか?」
「このような場所でそういうことを仰らないでください」
作品名:「もう一つの戦争」 開戦と子育て 2 作家名:てっしゅう