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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「もう一つの戦争」 開戦と子育て 1

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磯村の父親はこの時すべては任せると言って軍の仕事に出かけていた。
話し合いがついて五月の中旬に磯村の両親は裕美子と一緒に修善寺の温泉旅館にやってきた。疎開してきたと言うべきであろう。軍のトラックでタンスなどの荷物は運ばれていた。これも五十六のお蔭だろう。
宿の女将が三人を出迎えた。

「ようこそいらっしゃいました。旦那様から聞かされていますのでご遠慮されずにご自由にお使いください。今はもう商売はしておりませんので。遅れました、わたくしは宿の主で女将の結城信子と言います。裕美子さんには女将さんと呼ばれていますがどちらでも構いませんので親しくさせてください」

「お世話になります。大磯から来ました、磯村幸一の父と母です。本人同様変わらぬお付き合いをよろしくお願いします」

「幸一様はお役目ですか?」

「ええ、そう聞いています。こちらへは多分時々しか来れないと思っております。裕美子さんにはお気の毒だけど、そういう時代ですから女は我慢しないといけません」

「お母様、その通りですね。なに不自由ない時代がやってくることを願って、私たちもお国のために役立ちましょう。ご案内しますのでこちらへ」