「妖刀正宗の復習」 第四話
当直をしていた警備員が懐中電灯を照らしながら深夜に巡回をしていた。正宗の展示してある前に立ち、懐中電灯を照らすと不思議なことに反射するでもなく光を吸収したように感じられたのだ。
変だと感じた警備員はもう一度照らしてみた。そこには自分ではない目が映っていたのだ。
「ギャ~・・・助けてくれ~」
その恐ろしさは暗闇の館内で足がすくみ動けなくなるほど息が止まっていた。
明治の時と同じく警備員は逃げようにも身体が動かなかった。
そして吹き抜ける風のようなものを感じて振り向くとそこに女性が立っていた。
「お前は盗賊の一味だな?」
「と、と、盗賊?違います・・・」
「まあよい。いずれにせよこの正宗はお前の血を吸いたがっておる。盗賊たちを見つけてこの刃にかけない限りこの宿命は終わらぬ」
「ち、ち、血を吸いたがっている?」
「そうだ。おとなしくしておれ。すぐに済む」
「た、た、助けてください・・・誰か!誰か、助けて~」
「騒いでも無理だ。お前の声は外には聞こえない。たとえ誰かが入って来ても私の姿は見えぬわ」
そう話すとすーっと警備員に近寄り、上段から左首をめがけて正宗を振り下ろした。
壮絶な叫び声がこだましてその場に倒れた警備員のおびただしい血を正宗は吸っていた。
翌朝出勤してきた交代の警備員がその現場を見て警察に届け出た。
美術館員たちもその悲惨な現場に声も出せなかった。
作品名:「妖刀正宗の復習」 第四話 作家名:てっしゅう