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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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この時代におけるわしは異常じゃ

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心メンテナンスというのがあるらしい。
今や誰もが言っているので試してみることに。
まったく、この時代というのはよくわからない。

「心メンテナンスへようこそ」

男は医者のような格好で手元には紙を持っている。
それで診断するんだろうか。
見た目には普通の医者の問診だけど。

「心にメンテナンスなんて必要なんですか?」

「当たり前じゃないですか。
 人間の体は毎日毎分変化しているんです。
 髪が伸びるように、心もさまざまなものを見て心も変容するんです」

「それが人なんじゃないんですか」

「同じこと、頭のおかしい殺人鬼の前でも言えますか?」

「……」

「人の心をメンテナンスして、
 正しく正常で健康的な心にするのがこのクリニックです。
 文句がなければ、始めますよ」

「はい、お願いします」

わしは寝かされると、そのまま変な機械の中に通された。
いくつものレーザーが心臓めがけて照射される。
痛みはないけれど、なんだか心を覗かれているみたいでいやな気分。



「先生、どうでした?」


「簡単な検査しかしてませんが、危険ですね」

「危険!?」

「心の奥底に、世界を征服したい願望がありました。
 それに、そのためにだったらどんなことをする覚悟も」

「それ危険なんですか」

「危険に決まってるでしょ!
 今やタイムマシンも作られているこのご時世!
 あんたみたいな思想犯罪者が未来にやってきたらどうなるか!」

「はあ……」
「精密検査しますから、こちらへ」

再び通された場所ではもっとゴツい機械が並んでいる。
ベッドに固定されると、機械の中に放り込まれた。


「やはり、危険ですね。心が病気になっていますよ。
 人を殺すことへの嫌悪が低く、敵対意識も強い。
 しかも仲間への信頼は人一倍強いじゃないですか」

「まずいんですか?」

「こういう人が組織的な暴力団を作るんですよ。
 今すぐ治療しますからこちらへ」

部屋に入ると今度は機械のたぐいはなく、
ただの注射器一本が置かれているだけだった。

「これで治るんですか?」

「ええ、これで完璧に治ります」

「どんなふうに?」

「友達を大切にし、暴力を嫌い、誰にでも優しく
 思いやりがあって、いつも笑顔で、精神が安定して
 争いを嫌い、友達を大切にする良い人になります」

「友達を大切にするって2回言いませんでした?」


ぶすっ。


医者は無言で薬を流し込んだ。
薬の浸透とともに、頭に渦巻いていた野心が消えていく。

「どうですか?」

「生まれ変わったような気分です。
 どうしてわしは今まであんなことを考えていたんでしょう。
 もっとみんな仲良くなればいいのに」

「これであなたの心も、
 虫も殺さない正常な状態へと戻りました」

「ありがとうございます、先生」





患者が帰った後、医者はカルテを見て驚いた。

「おい、まさかあの患者って……」



時は戦国時代まで戻る。
タイムマシンで過去に戻った患者へ家臣がやってきた。

「殿! 次はどこを攻め落としましょう!?」
「さあ殿! われらに進撃のご命令を!」
「殿、次なる命令を我らに!」


織田信長は宣言した。


「みんな友達。争いなんてやらないよ♪」


翌日、ふぬけになった殿を明智がぶっ殺した。