流星群
キミの仕事姿をときどき見かける。
キミのお父さんの始めた新事業をともにする為に キミは習ったり資格を修得したりとあれこれ学んだ。その甲斐あって活き活きと働いている。すっかり素敵な女性になったね。
ボクも契約を結んで仕事に関わらさせてもらっている。当初、契約社員として雇ってくれるという打診があったけれど、ボクはボクで此処までやってきたし、こちらが本業で契約もしている。ありがたい話だったけど、キミとの距離感は今のほうが心地よい。
ボクに対するキミのお父さんの評価はどうなのだろうか。
『（キミが）きちんとできるならあなたとの交際も認めてくれるって、父が申しておりますが…』とキミが教えてくれてから キミの頑張りは充分だと思うけれど、ボクはどうなんだろう。何もお小言が下りてこないということはいいのかな。キミを守っていけるだけの自信を持ちたいけど あまり変わらないな。
よく変わるのは空のご機嫌ばかりだ。めそめそしたり、どんより沈み込んだり、陽射しが暑く晴れたり、先日の夕立は豪雨で キミがずぶ濡れで玄関の外に立ったままなのに気付いた時、ボクはバスタオルのように包んでしまった。思わずしたこととはいえ、ちょっと考えれば、ふたりとも服を濡らすこともなかったかな。キミはそんなボクを見上げて笑った。
「にゃん」
雨雲もびっくりするほど晴れた笑顔だった。気まぐれな天気なんてキミには敵わないな。
あぁ、今までも会う約束をしたことはほとんどないけど この頃キミと逢うことがなかなかできない。背筋がぞくっとすることがあっても キミはボクの背中の後ろに居てくれない。逢いたい気持ちなんて意識したことなかったのに……ボクは逢いたがっていた。
七夕の夜のふたりだって、逢う約束していたのに 地上には大雨を降らして、結局キミと逢えなかった。
やがて、梅雨も明けて蒸し暑さも徐々に夏の暑さに変わりつつあった。