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連載小説「六連星(むつらぼし)」 第76話~80話

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そんな気持ちにかられながら、響が静かに歩みを進める
玄関脇の通用口から、通い慣れた病院内へ入ります。
見なれているはずの玄関とロ―ビ―の景色が、今朝に限ってなぜか、
別の場所のように見えてならない。


 (私は、すでに動揺している・・・・
 いえ、これはもう狼狽の状態にちかい。
 朝起きた私を待っていたのは、山本さんの危篤と、父の告白だ。
 私が生まれてきたことへの感謝の日と、山本さんが死を迎える瞬間が
 同時にやってきた・・・・
 なんという皮肉だろう。なんという過酷な運命の日なんだろう。
 落ち着け、落ち着け・・・・響。
 哀しむのも喜ぶのも、まだまだ早い。大きな仕事が私を待っている。
 笑顔を作るのに一番つらい日が、ついにやって来た。
 それでも父は、最高の笑顔で見送ってやれと言い切った。
 父の真意はよくわかる。その通りだと私も思う。
 できるのだろうか、私に・・・・
 母がいつも見せてくれる、あの優しくて素敵な笑顔が。
 お母さん。お願い。一度でいいから、私にあなたの笑顔をください。
 父の気持ちのこたえて、山本さんを最高の笑顔で、送り出してあげたいの。
 臆病者になりかけている響に、勇気と笑顔をください、お母さん。
 最高の笑顔を、私にください・・・・母さん、父さん・・・・)

 
 胸の動悸を抑えながら、響がいつものようにいつもの階段から、
山本が待つ病室へ向かっていく。


81話へつづく