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鐘の音が聞こえる

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 顔を上げると、彼が心地良さそうに鐘の音を聞いている。
 それは私にとって嬉しくも悲しくもあった。

「……浩平は明日が来るのが嬉しいの?」
「うん。だって、明日にはきっと沙希の幸せが待っているから」

 そう、私は知っていた。
 私の願いが彼の笑顔であるように、彼の願いが私の笑顔であることを。
 今でも私達の幸せは繋がっているということを。

 だから、私は探しに行かなくちゃいけないんだ。
 新しい、私達の 幸せ を。



 だけど、もう少しだけ時間が欲しいの。
 あったかいコタツに入りながら、あなたの微笑みを見つめていたい。



 せめて、この鐘が鳴り終わるまで。

作品名:鐘の音が聞こえる 作家名:大橋零人